マスク生活が続く今日このごろ。いろいろ不便なこともあるけれど、口元を隠せる今だからこそ始めやすいこともあります。その代表格が、歯科矯正!
矯正歯科で総院長を務める石亀勝先生いわく、「マスク生活が続いているうちに歯並びを治したい」と相談に来る人が最近増えているとのこと。
そこで今回は、知っているようで意外と知らない「歯科矯正」についてのギモンをQ&A方式でご紹介。ワイヤーとマウスピースの違いや、それぞれのメリット、一般歯科・矯正歯科・審美歯科の違いなど、素朴なギモンを解決していきましょう。
Contents
石⻲勝 先生
透正堂⻭科・矯正⻭科/高田馬場駅前矯正⻭科 総院⻑。『キレイライン矯正』『キレイラインKIDS』監修医。30年の矯正⻭科治療と、21年のマウスピース矯正⻭科治療経験を持つ。⻭科医師免許と⻭学博士号を日本で取得後、矯正歯科の本場アメリカでも臨床を経験。
■歯科矯正のメリット|小顔やEラインに効果があるってホント?
Q.そもそも「歯科矯正」って何ですか?
A.
歯科矯正(矯正歯科治療)とは、歯並びの悪さが原因で起きるトラブルや悩みを解決する治療方法です。歯並びが原因で「物がよく噛めない」「呼吸や発音がしづらい」といった不具合(不正咬合)を治療できます。
不正咬合とは、具体的には次のような状態です。
歯科矯正で改善できる不具合は……
・ガタガタした歯並び、八重歯(叢生)
・出っ歯(上顎前突)
・受け口
・すきっ歯(空隙歯列弓)
・前歯が閉じない(開咬)
・中心がずれている歯並び
・噛み合わせが深い歯並び(過蓋咬合)など
これらの状態は多くの場合、歯科矯正で改善が可能です。
Q.歯科矯正を行うと、どんなメリットがありますか?
A.
見た目がキレイになるのはもちろんですが、歯科矯正はもともと歯の不具合全般に関する治療ですので、他にもさまざまなメリットが得られます。
1.自分の歯を、良い状態で長持ちさせられる
1つめは「歯の長期安定保存」です。人生100年と言われる現代、歯をできるだけ良い状態で保つことは将来の健康や生き方そのものに関わります。若いうちから歯並びを整えておくことで、年をとってからも「食べ物が噛みやすい」「会話がしやすい」など、快適な生活を送りやすくなります。
2.咀嚼、発音、呼吸がスムーズになる
2つめは「機能性の向上」です。歯並びが整うと、咀嚼、発音、呼吸といった機能が向上します。この3つの機能は普段はあまり意識していないかもしれませんが、生活のクオリティに直結しています。
たとえばダイエットに重要な満腹中枢は咀嚼によって刺激されるため、食べ物が噛みやすくなれば過剰な食欲を抑えられるとも言われています。また発音がスムーズに変わることで、人間関係に自信が持てるようになる場合もあります。
3.見た目が美しくなる
改めて言うまでもないかもしれませんが、3つめのメリットは「審美性の向上」です。すきっ歯や出っ歯が解消されて歯並びがキレイに整うと、見た目にも美しく、清潔感のある印象になります。
歯並びに関するコンプレックスから「人前で笑えない」「恋愛に消極的になってしまう」と感じている患者さんが、歯科矯正を行うことで前向きな気持ちになることも珍しくありません。
またこれらに加え、「歯磨きやフロスがしやすくなる→歯の健康を保ちやすくなる」「歯ぎしりのクセが改善される→それに起因する顎関節の損傷や肩こり・頭痛がなくなる」といったメリットもあります。
Q.歯科矯正で「小顔になる」というのは本当ですか?
A.
顔の骨格の歪みや大きさを変えられるわけではありませんが、歯ぎしりや食いしばりのクセがなくなれば、頬やあごの筋肉のコリも改善されます。筋肉のコリによる歪みやこわばりが改善されると、二重あごが解消されてスッキリしたり、顔の輪郭がくっきり見えるようになったりします。
「歯科矯正をしたら小顔になった」と感じる人がいるのは、おそらくこのためでしょう。
Q.歯科矯正で「Eラインのバランスが整う」というのは本当ですか?
A.
Eライン(エステティックライン)とは、鼻の頭と下あごを結ぶラインのことです。現代のトレンドでは、唇がEラインの内側にあると美しいと考えられています。
Eラインのバランスは、鼻・唇・あごの位置関係や骨格など「歯以外の要素」にも左右されますので、歯科矯正を行っただけで必ずしもEラインが整うわけではありません。ただし、たとえば「出っ張った前歯を引っ込める」といった治療を行うことで、結果的にEラインのバランスが整うケースはあります。
■歯科の種類|一般、矯正、審美…どんな基準で選べばいい?
Q.一般歯科、矯正歯科、審美歯科。この3つはどう違うのですか?
A.
「一般歯科」は、歯科治療全般を請け負う診療科です。矯正を含むオールマイティな治療を行っているケースもありますが、基本的には、健康保険が適用される虫歯治療などが得意です。歯並びの矯正にフォーカスするのであれば、矯正歯科もしくは審美歯科のほうが目的に合った治療を行えるでしょう。
Q.では、矯正歯科と審美歯科の違いは何ですか?
A.
簡単に言うと、「矯正歯科」は歯の状態を維持しながら時間をかけて動かしていく治療法を得意とし、「審美歯科」は健康な歯の抜歯も含め短時間で見た目を整える治療法を得意としています。(※ドクターによっても異なります)。
矯正歯科では、自分の歯をできる限り健康な状態で残しながら移動させる治療をメインに行います。歯を削ったり抜いたりする行為は最小限に抑え、どうしても必要な場合(歯が移動するスペースを作るためなど)のみ行います。
審美歯科では、健康な歯を抜く・削ることも含め、見た目を整えることに重点を置いた治療を行います。歯並びの悪い部分を抜歯した後、パテや被せものを使ってキレイに見せる、といった施術も採用されるため、短期間で結果が出る可能性が高いです。
Q.矯正歯科、審美歯科、それぞれのメリットは?
A.
矯正歯科の主なメリットは「自分の歯を最大限保ったまま治療ができること」。
審美歯科の主なメリットは「短期間で治療を完了できること」です。
たとえば、審美歯科では「どうしても明日までに歯並びを整えたい」というケースにも対応できますが、健康な歯を失うリスクもあります。一度失った歯は元には戻らないので、施術前に慎重に検討しましょう。
■歯科矯正の種類|ワイヤー矯正とマウスピース矯正は、どう違う?
Q.矯正歯科で行う施術には、どんな種類がありますか?
A.
矯正歯科で行う施術は、大きく分けて「ワイヤー矯正」「マウスピース矯正」の2種類があります。
「ワイヤー矯正」とは、ワイヤーとそれを支える部品(ブラケット)を歯に装着し、ワイヤーの反発力を使って少しずつ歯を移動させる方法です。一般に「歯科矯正」と聞くと、銀色の装置で歯が覆われているところをイメージするのではないでしょうか。それが典型的なワイヤー矯正です。
「マウスピース矯正」とは、自分で取り外しできるシート状のマウスピースを歯に装着して、やはり少しずつ歯を移動していく方法です。マウスピースは、一人ひとりの歯の形状に合わせてコンピューターでプログラミングし、製作されます。透明な素材でできたものが多く、治療中に人と接しても目立ちにくいのが特徴です。
ワイヤー矯正の歴史は古く、100年以上前から続いています。その技法はすでにある程度完成していて、今後大きく変化することはないだろうと考えられています。
一方、マウスピース矯正は、比較的新しい技術です。コンピューターの進歩とともにここ20年ほどで登場した、今も発展中の分野です。従来の矯正(ワイヤー矯正)とは異なるメリットも多数見られ、矯正治療の業界内からも注目されています。
それぞれのメリット・デメリットを、順番に解説しましょう。
Q.ワイヤー矯正のメリット・デメリットは?
A.
ワイヤー矯正のメリットは、比較的強い力をかけやすく「重度の症状や大規模な歯列の移動にも対応できること」です。たとえば抜歯をともなう矯正などで、歯を根っこから動かす治療は、歯の表面にかぶせるマウスピースだけでは現状難しい場合があります(※将来的に変化していく可能性はあります)。
また、ワイヤーは基本的に自分で取り外すことがなく、24時間ずっと装着し続けた状態になるので「食事や歯磨きの際、いちいち付け外しするのは面倒」と感じる方に向いています。
ワイヤー矯正のデメリットは、器具が目立ちやすく、口の中を傷つけやすいことです。また取り外しができないため歯磨きやフロスがしづらく、「硬い食べ物はNG」といった食事制限が必要なケースもあります。
Q.マウスピース矯正のメリット・デメリットは?
A.
マウスピース矯正の大きなメリットは、やはり「見た目が目立ちにくいこと」です。厚さ0.5ミリ程度の透明なマウスピースもあり、すぐ近くで会話している相手にも分からないくらい自然な見た目をキープできます。
また自分でも取り外しができるため、食事や歯磨きの邪魔になりません。ワイヤー矯正ではどうしても「硬いものを食べてはいけない」といった制限が必要ですが、マウスピースにはそうした制限もありません。
マウスピース矯正のデメリットは、重度の症状への対応が難しい点です。とは言え、歯の状態によって対応できるかどうかは変わります。自己判断は難しいので、迷った際は一度ドクターに相談してみると良いでしょう。
■歯科矯正にかかる金額、期間|どれくらい準備しておけばいい?
Q.歯科矯正にかかる金額はどれくらいですか?
A.
ケースバイケースで大きく変わります。あくまでも目安になりますが、歯列全体を動かす治療なら60〜100万円程度は準備しておくと安心です。
歯列全体ではなく一部だけ、たとえば「前歯の小さな凸凹だけ整えたい」というケースでは、10〜70万円くらいの金額に収まることもあります(※石⻲先生が監修を務める『キレイライン矯正』では、総額10〜30万円程度で治療を終える患者さんも実際にいらっしゃるとのこと)。
同じ治療範囲でもドクターや病院によって金額が異なるため、総額の目安は治療を始める前にしっかり確認しておきましょう。
Q.同じ治療範囲なのにドクターによって金額が変わるのは、何故ですか?
A.
審美を目的とした歯科矯正は、保険が適用されない全額自己負担の「自由診療(自費診療)」という扱いになります。法律上、自由診療の金額はドクターや病院が独自に決められるため、金額が変わってきます。
Q.歯科矯正にかかる期間は、どれくらいですか?
A.
こちらもケースバイケースで異なりますが、一般的な成人が歯列全体を動かす場合、数週間〜2か月に1回程度の通院で「約3年」が一つの目安です。
とくにワイヤー矯正は長期間続けると歯にダメージを与えるリスクがあるため、多くのドクターは約3年以内に完了できるようスケジュールを組んでいきます。
反対に、施術内容によっては短期間で完了する場合もあります。たとえば「マウスピースで前歯だけ整える」といった歯の動きが少ないケースでは、5か月〜1年程度で完了することも多いです。
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気になっていた歯並びを治すなら、今はやはり良いタイミングと言えそうです。審美面でも生活面でもメリットがある、歯科矯正。施術方法や費用、期間など、事前にしっかり確認しつつ検討していきましょう!
取材協力 株式会社ARETECO HOLDINGS