WI 本作は、お父さん、伊藤さん、彩と20歳ずつ離れて、それぞれの価値観がありますよね。
リリー お父さんの世代は、お母さんに「おい、めし」って。お母さんも専業主婦じゃないですか、どんな裕福な家庭でも、内職で働いていても、家を空けない。お父さんのやっていることは、お父さんの時代で当たり前で、伊藤さんの時代は周りが自由になって、彩の時代は働いているのが当たり前で。それぞれの時代の当たり前。この人たちにとって当たり前で、この人たちの価値観の中でやっている。お父さんの時代のほうが役割分担がはっきりしている。子どもたちもお父さんが給料袋を持ってきて「今月もありがとうございます」って。息苦しく感じるけど、役割がはっきりしているほうが、生き方としてはシンプルですよね。
WI では、義理の両親との同居はいかがですか？
リリー 俺は全然いいですよ。向こうの親と住むとかね。逆に助かりそう。特に住んでいたら、仲良くなりますもん。年が近いし（笑）。このお父さんはまっすぐなだけで可愛げがあって、偏屈ではない。
上野 私は、その人の人格によりますけど、家族がみんな仲良かったら“苦”じゃない。頑固で堅物だったら「ひとりでいろよ！」ってなりますけど（笑）。みんなの会話を聞いていたり、全然怒られなくて、優しくて、“ぽっ”と言ってくれたことが名言だったり……。いいな、と思います。
リリー このお父さんの頑固さってせいぜい「ウースターがいい」とか、そんなにうるさいことを言わない。
上野 彩のほうが、勢いでお父さんを交わしていることがあって、全然真に受けてないから、お父さんの肩身が狭くなっちゃって（笑）。
WI 最後に、メッセージをお願いします。
リリー 映画としては、「何が起きるわけでもない」。でも、映画として見るからそうなだけで、ひとつの家庭としてみると、大事件が起きまくっているんです。“お父さんが来た”とか、“家をどうする”とか、事件ばっかりが起きている家。でもそれが世の中のおうちなんです。ちょっとした多幸感……。家族のわずらわしさを超えて、温かい気分になったり。世の中、お金の話がいっぱい出てきますけれど“幸せ”って、「結局、金もいらねぇな」ってこの映画で思えたりとか、多くを望むよりも、今あるものを失わないように、しなきゃいけないとすごく思える作品です。
上野 この3人の、どの立場で見ても面白い映画だと思います。「ちょっとした未来をどうやっていこうか」って“人に話してもなかなか解決できない話”や“人に話すにはちょっと重苦しい話”になっちゃいそうで……。それを、気軽に映画館に遊びに来てもらって、重くなくクスクス笑いながら、照らし合わせて、家族の裏側を垣間見てほしいと思います。
最後にリリーさんが話されていますが、「大事件」があるわけではなく、日常に起こりそうな出来事でつづられる映画です。でも一般的に考えると皆さんが一度は考える悩みが凝縮されている映画です。個人的には上野さんの“酵素”が気になりましたが（笑）。映画『お父さんと伊藤さん』は、10月8日より全国ロードショーです。（平山正子）
『お父さんと伊藤さん』
配給：ファントム・フィルム
（c）中澤日菜子・講談社／2016映画「お父さんと伊藤さん」製作委員会
公式サイト： http://father-mrito-movie.com/
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