渡部豪太、「この作品は自分に対する挑戦」【インタビュー前編】

令嬢と召使,雛形あきこ,渡部豪太,シアタートラム,笹部博司,一色隆司

WI 私は、男女の駆け引きが“緊迫感のある、エネルギーが必要”な作品に感じたのですが。

渡部 そういう作品ありますよね。観た後に、疲れさせたら成功ですね。心地よい疲労感と……(それなのに)三軒茶屋で何を食べようと元気もわいてくる。それが観客が観る芝居ですよね(笑)。そういう意味で、お客さんにいい意味のストレスを与えることを加味して作品を作って……うん。でも、結果的にそうあるべきで、それをてらって作るのではなく、結果的にそうなってしまうお芝居になればいいな。

WI 資料から、ジャンは出世欲でジュリーを利用するように感じたのですが……。

渡部 私は、ジャンがジュリーを利用しているとは思えなくて、自分の中に野望という名の種は持っていたけど忙しい日々の中でその芽に水をやっていなかった。でも、ジュリーによって、一気に花を咲かせてしまったんだという感じなんだと思います。

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WI まだ、稽古前だと伺っていますが、雛形さんには、お会いしましたか?

渡部 一度お会いしたんですが、“不思議な雰囲気を持った女性”という印象を持ちました。ただ“美しくて、かわいいだけじゃない”、いくつも引き出しを持っているかたなんだと。雛形さんが演じるジュリーに(自分が)ついていくという感じになるような気がします。計算できない状況で「どんなジュリーを作られるか」という楽しみもあります。現場のその瞬間でセッションしていくね。

WI それが演劇の楽しみですよね。

渡部 そうですね。毎日が新鮮です。

WI 最初に出演オファーを受けたときはどう思いましたか?

渡部 完全に、自分に対する挑戦だと思いました。このタイミングでこの戯曲が私のところに来るということは、偶然ではなく必然のような。でもこの戯曲を面白く上演できれば、未来の渡部豪太が広がることはもちろん、先が豊かになると思ったので、「喜んでやらせてください」と申し上げました。

WI 例えば?

渡部 日本語って難しいと思っていたところなんですが、ふたり芝居ということは、単純計算で脚本をふたりで割ると相当量がありますよね。セリフは現代的な言い回しなので、観客のかたにとっては聞いてて難しいわけではありませんが、普通に話していても観ている皆さんに「伝える」って別のエネルギーが必要になってきます。それって日本語をどれだけ正確にしゃべられるかで、そういう意味での挑戦です。言葉に縛られるために演劇をするわけではありませんが、聞いている人が心地の良い日本語を習得して、お客さんにお伝えしたいと思っています。