「卵子凍結」で出産できる確率は?実際の流れや費用など…気になるあれこれに産婦人科医が回答!

20代の今こそ、卵子凍結についてきちんと知っておきたい!

最近、女性の体のことをテクノロジーで解決する「フェムテック」が話題。中でも今、20代がいちばん気になる3つの〝テック〟「卵子凍結」「低用量ピル」「HPVワクチン」にクローズアップ! 今回は「卵子凍結」について詳しく聞いてみました。


今と未来の私のために、卵子凍結について知っておきたい!

「いつかは子供が欲しい」という未来の自分のための選択肢!

答えてくれるのは…

船曳美也子先生
産婦人科専門医・生殖医療専門医(オーク銀座レディースクリニック)

ふなびきみやこ/兵庫医科大学卒。医療法人オーク会にて不妊治療を専門に診療にあたる。卵子凍結や未熟卵の培養法などにも詳しく、自身は44歳で体外受精による出産を経験。

Q. 卵子凍結って何?

A. 受精前の卵子を将来の妊娠に備え凍結保存しておくこと

「卵子は、年齢を重ねるほど数が減って、質も低下していきます。そのため、少しでも若いうちの卵子を採取して未受精のまま凍らせ、保存しておくのが卵子凍結。将来、子供を持ちたいと思ったタイミングでパートナーの精子と体外受精させます」(船曳先生)

Q. 卵子凍結は誰でもできるの?

A. 原則は39歳以下で、卵巣に病気のない成人女性

「まずは成人していることが条件。上限は、採卵時に40歳未満であることが推奨されています。低用量ピルやホルモン剤を飲んでいる場合は事前にストップを。また、なんらかの病気で卵巣機能が低下していると、排卵を促す薬に反応しない場合があります」(船曳先生)

Q. 凍結した卵子を使って出産できる確率は?

A. 10個保存した場合、20代なら70%超え

「凍結卵子が妊娠・出産につながる確率は、年齢や採卵した卵子の数によって違います。20代なら10個で7割以上、30代後半になると10個で半分の確率です。年齢やコンディションによっては1回に採取できる卵子の数も少なくなるため、出産率を上げたければ採取回数を増やす必要が」(船曳先生)

■卵子凍結からの出生率

※Aylin Pelin Cil,M.D. at el; Age-specific probability of live birth with oocyte cryopreservation: F&S Vol.100, No.2, August 2013 p492-499より作成

Q. 若いほど、卵子はたくさん採れるの?

A. 卵子の減少スピードには個人差が。AMH検査でチェックを!

「女性の体内にある卵子は、実は胎児のときに一生分が作られて、生まれてからは年齢と共に減少していくのみ。ただし、その減り方には個人差があって、20代でも30代相当、30代でも40代相当しか残っていない人はいます。自分の現在の卵子の在庫は、血液を採取するAMH検査(抗ミュラー管ホルモン検査)で推定できます」(船曳先生)

Q. 卵子凍結するのにいくらかかる?

A. 10個の凍結でおよそ40万円。東京都は上限30万円までの助成金制度あり

「費用は凍結する卵子の個数によって変動しますが、当院(オーク銀座レディースクリニック)の場合は、排卵誘発剤を使用して10個の卵子を採取、凍結するのに約40万円、さらに凍結保存料が年10万円程度です。保険適用外のため全額自己負担ですが、東京都では条件を満たす女性に対し、上限30万円までの助成があります」(船曳先生)

■「卵子凍結助成金制度」とは?

加齢などによる将来の妊娠機能の低下を懸念する場合に行う卵子凍結にかかる費用を、東京都が助成するシステム

対 象:東京都に住む18〜39歳の女性(採卵を実施した日での年齢)

助成額:合計最大30万円

  1. 卵子凍結実施した年度に上限20万円
  2. 卵子凍結を行った翌年以降、保管更新時の調査に回答した際、1年ごとに2万円(最大5年間)

主な条件は…

  • 都が開催する説明会に参加する
  • 都内に住民登録している
  • 採卵や凍結後、都が実施する調査に協力する、etc.

Q. AMH検査はどこで受けられる?

A. 基本は産婦人科。検査を受けるタイミングも大事!

「卵子凍結を望む場合、まずは産婦人科を受診。そこでAMH検査を受けて、体内に残された卵子の数を調べるのが最初のステップです。ただし、長期間ピルを服用しているとAMHの数値が実際より低く出る可能性があります。正確な結果を得るためには、検査のタイミングも医師と相談しましょう」(船曳先生)

\自宅で簡単!セルフでAMH値を測れるキット/

THREE EggMe 卵巣年齢検査キット ¥17,600

指先で採った微量の血液を郵送し、後日スマホで検査結果を確認。採卵個数や出産確率のシミュレーションも。

Q. 卵子凍結の実際の流れを教えて!

A. 検査〜採卵まで約2週間。通院3~4回で完了

28歳で卵子凍結をした甲斐秋帆さん(会社代表・29歳)のケース

※1 卵巣のう腫や子宮筋腫、子宮内膜症など、卵巣や子宮に病気があると排卵誘発の効果が出にくいので、超音波で事前に確認。※2 本来、排卵は月に1回1個だけ。そのため多くの卵子を採取するには、個々のホルモン値などに合わせた排卵誘発剤が必要になる。※3 排卵誘発の期間中、卵子が増えて卵胞(卵子を包む袋)が順調に育っているか確認するために受診。※4 受精が可能な状態に成熟していないと、採卵しても凍結保存はできない。※5 排卵誘発剤で卵子の数が増えると卵胞が大きくなるため、卵胞液を吸い出して採卵するとき卵巣に負担がかかる。そのため採卵後に卵巣の腫れや痛みが続く場合も。※6 保管料は「オーク銀座レディースクリニック」の場合。凍結保存する卵子の数によって変動。
卵子凍結は未来への掛け捨て保険!(甲斐さん)

「28歳のときにAMH検査を受けてみたら、なんと数値が37〜38歳と同等の結果。慌てて卵子凍結を決断しました。初めて受診をしてから採卵の日までは、毎日自分で排卵誘発の注射を打ったり薬を飲んだり、通院も数回必要だけれど、そんなに大変ではなかったです。正直、一番の負担は費用面。採取できる数が多いと出産率は上がるけれど、採卵の費用も保管料も高くなります。ある意味、未来のための〝掛け捨て保険〟。長い目でのプラン設計は必要ですね」

気になる「卵子凍結」について、プロに聞いてみました。今と未来の自分のために、まずはこの記事を参考に情報を集めるところからスタートしてみて。

CanCam2024年11月号「20代の保健室リターンズ」より
イラスト/caco 構成/つつみゆかり WEB構成/久保 葵