大人気ジャズ漫画『BLUE GIANT』が待望の映画化! 声優初主演の山田裕貴さんに魅力を聞いてみました♪
熱い展開やストーリー、圧倒的表現力の音楽シーンに多くのファンを持つ漫画『BLUE GIANT』が、この冬アニメーション映画化! 主人公・宮本 大の声を演じる山田裕貴さんに、作品にかける思いや魅力を聞きました。
ジャズは誰が聴いても伝わる熱い音楽なんだって知りました
漫画『BLUE GIANT』への印象を教えてください。
全巻そろえて愛読している、大好きな作品です。ストーリー自体がめちゃくちゃ面白いし、コマ割りがおしゃれだったり、心理描写が繊細だったり、とにかく展開が熱い! いいと思った言葉はメモをして、後で見返すくらい影響を受けています。個人的な意見ですが、僕はこの漫画に出合うまで、ジャズっておしゃれなものだと思っていたんですよ。大人になってから、ちゃんと正装してジャズバーで聴くものなんだろうなって。でも、シンプルに音楽のジャンルのひとつなんですよね。そんなにかしこまらなくても、誰が聴いても何か伝わるのがジャズなんだって、この作品から教わりました。
オファーが来たときの気持ちは?
最初、てっきり実写化するのかと思っていました。でもこの作品の中で演奏されている音楽は俳優さんがある程度練習して到達できるレベルのものじゃないから、頼むから実写化はやめてくれ!って(笑)。アニメーション映画と聞いたときの率直な感想は『その手があったか!』でした。その後に主人公の宮本 大役と聞いて、もう『ドヒャー』ですよ。驚きとうれしさで、マジか!?って。
大はどんな人物だと感じますか?
本当に強い人。仲間思いなんだけど、夢のために必要ならばひとりで進んでいく覚悟もあって、ただ前しか見ていない。自分のことを心から信じているまっすぐな男だと思います。
共感する部分はありますか?
大って、『世界一のジャズプレーヤーになる』という夢を掲げて、ひたすらに自分の道を突き進んでいくじゃないですか。思い返してみれば、僕も飲食店でバイトしていた18歳の頃、ネームプレートに『俳優王に俺はなる!』って書いていたなって。だから彼とは、もしかしたら似通っている部分もあるのかなと感じていました。ただ僕の場合は、口に出していないと怖いから『俳優やるんだ』とか『絶対なる』とかって言っていた節も。当時は、デビューできなければ終わりだ、ここにいる意味はないと思っていたんですね。なので、これと決めたものにすべてを注ぐ大のスタンスには共感できます。今もお芝居をする中で、全力を出し切って、もうこれで終わっていいと思うことがよくあります。
大の声を演じるにあたって、どのようにアプローチしましたか?
普段の演技でも声は気にするんですが、表情や眼差しだけで訴えるシーンのほうが個人的には大事だと思っていて。人って、言葉を尽くせば尽くすほど軽くなっていく気がするので。でも声優の場合は、声にすべてを込めないといけない。特にこの映画は音楽がめちゃくちゃよくて、『どんな音がするんだろう?』って思いながら読んでいる人が多いからこそプレッシャーもありました。このセリフはどのくらいの声の圧なのか、悲しみの成分が何パーセント含まれているのかとか、とにかく試行錯誤して色々と試して。普段と違う頭の使い方をするので大変だったけど楽しかったです。大を演じられて本当によかった!
声優としては初主演だとか?
はい、こんなにフルで参加させてもらったのは初めてでした。作品に登場するジャズクラブ『So Blue』の支配人・平役の東地宏樹さんは僕も大好きな声優さんですが、『1本丸ごと演じて初めて感覚がつかめると思う』と言われて、本当にそのとおりでした。(沢辺)雪祈役の間宮祥太朗くんとは映画『東京リベンジャーズ』でも共演しているんですが、『大には裕貴くんの声がぴったりだよね』って言ってくれて。お互いにめちゃくちゃヤンキーの格好をしているときに言われたので、不思議な感じでしたけど(笑)
作中にある“音と自分がつながった瞬間”のような、一線を超えた感覚になったことはありますか?
自分じゃないって認識すらないくらい、自分じゃなくなったときがありました。その瞬間は、周囲のみんなが僕に向ける目が違うし、お芝居する相手の演技すら変えられましたね。一度だけそれを体感したのが、ABEMAプレミアムで配信中のドラマ『頼田朝日の方程式。─最凶の授業─』の撮影中。般若心経の70倍もの膨大なセリフ量をワーって言っていたら、一瞬パンって切り替わって、ゾーンに入ったような感覚がありました。その瞬間、『絶対に逃しちゃいけない』って息をのんで撮影するカメラマンさんの思いとか、その場にいるひとりひとりの感覚が伝わってきて。目の前のやり取りに集中しているはずなのに、その場のすべてを感じ取れた気がしました。僕の勘違いかもしれないと疑う気持ちもちゃんと持ちつつ、でも確かにそこにあった気がするんですよね。ちょっと次元を超えた瞬間だったなと思います。
誰かのために毎秒全身全霊をささげる、それでいいのかなって
昔は色々なところに出向いて、あらゆるジャンルの人たちと話すのが好きだったけど、そういった生活を続けていたらちょっと疲れてきちゃって。ここのところ本当に役のことしか考えていない日々が続いていて、どこか心を失っていっていると感じることがあります。少し前までこの状態にヤバさを感じていたけど、最近は逆に「この感覚って貴重じゃない?」と思うようになってきました。役に入っていない状態の自分自身では何も感じられないのも、いち俳優としては逆にプラスかもなって。だから今は、心が“無”の感覚を味わおうと思っています。ただ、作品や誰かのため毎秒全身全霊をささげる、それでいいのかなって。例えば『BLUE GIANT』であれば、原作を描かれた石塚真一先生に『映画にしてよかった』と思ってもらえるように魂を込めました。そこに僕の欲はなくて、こちらからは何も求めないけどすべて受け止めて包み込みますって、そんな心持ちです。僕の好きな言葉に、『過去は見なくていい。過去を振り返らなくていい。未来のことも考えなくていい。ただ、今この瞬間を一生懸命生きればいい』というのがありますが、まさにこの言葉がしっくりきます。この先身につけたい武器ですか? 他者を寄せ付けないほどの圧倒的演技力! …と、人間力と、愛され力。すみません、3つも出てきました(笑)。欲、全然ありましたね。
About『BLUE GIANT』
第20回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞および第62回小学館漫画賞(一般向け部門)など受賞多数!
世界一のジャズプレーヤーになる…!! 物語は仙台、広瀬川から始まる──
主人公はバスケ部に所属する宮本 大。中学のとき、友人に連れられて観に行ったジャズの生演奏に心打たれ、その後、たったひとりでただがむしゃらにテナーサックスの練習をはじめる。楽譜は読めず、スタンダードナンバーも知らない。ただひたすらまっすぐ突き進んでいく。
「絶対にオレは世界一のジャズプレーヤーに、なる」。
雨の日も猛暑の日も毎日毎日サックスを吹く。初めてのステージで客に怒鳴られても。それでも大はめちゃくちゃに、全力で吹く。激しく変わる。激しく成長する。ジャズに魅せられた少年が世界一のジャズプレーヤーを志す物語。
著:石塚真一/小学館/各¥770/発売中
1990年9月18日生まれ、愛知県出身。卓越した演技力と存在感で、映画『HiGH&LOW』シリーズや『東京リベンジャーズ』など話題作に多数出演。現在は、大河ドラマ『どうする家康』(NHK)、月9ドラマ『女神の教室〜リーガル青春白書〜』(フジテレビ)に出演中。
「役に入り込みすぎて自分じゃないって認識すらないくらい自分じゃなくなったときがありました。『BLUE GIANT』にはそういう〝超えた瞬間〟がめちゃくちゃあるんです」と語ってくれた山田裕貴さんが声優初主演を務める映画『BLUE GIANT』は本日公開! ぜひお近くの映画館で、その魅力を確かめてみて。