WI 西さんが、直木賞受賞の際に、石川さんへの感謝を述べられてましたよね。あのスピーチ、本当に感動しました。
石 本当に編集者冥利につきます。あの場であんなことを言うと、ほかの担当の方がどう思うだろうとか、いろいろあったはずなんですけど……。それでも特別に思ってくれてたというか……。西さんは、本当に、素直な、正直な方なんです。賞を獲ってデビューしたわけではないということで、最初から一緒にやっているというご縁をすごく大事にしてくださっていて……。もう、充分に返してもらってると思ってるし、ご本人にもそうお伝えもしています。でも本当に……義理堅い方だと思います。
WI 実際スピーチを聞かれているときは、どういう心境でしたか?
石 会場の端っこのほうでぼーっと立ってたんですけど、自分の中のキャパシティが完全にオーバーしてしまい(笑)。あの、シャンデリアの電球が一個消えてたんですけど、それをずっと見てました。横にいる人とかは涙ぐんでるのに、自分はなぜか泣いてなくって。この間、受賞贈呈式に出て、初めて泣きそうになりました。
WI 泣きはされなかったんですね。
石 泣きはしなかったけど、それは感情が動かないとか、そういうことではなくて。自分のなかで消化できないくらいの感情の表現って、通りいっぺんじゃないんだなっていうのを実感しましたね。悲しいときに泣くとか、うれしいから笑うとか、そういうことだけでもないんだなって。本当に、10年の間にいろんなことをやらせてもらいましたし。今ここで死んでも、後悔はないです(笑)。
WI でもこれをまだやりたい、みたいなことはあるんですか?
石 そうなんですよ! 『サラバ!』を出すとき、西さんにも、自分にも「コレをやっちゃったら、この後どうしたらいいんだろう」という怖さがありました。でも、人間というのはおもしろいもので、だんだん気持ちが変わっていく。今はまだ空っぽになった感じは残っているんですけど、西さんとも、ほかの作家さんとも「次は何をやろうか」とも思えるし。自己満足な意味かもしれないですけど、そういうふうに思えること自体が幸せだと思います。
「今後は全然違うジャンルとかもやってみたい」という石川さん、実は小学館が発行する文芸誌『きらら』の編集長でもあります。コレがなんと、無料らしい!? 最終回は、本好きなら絶対チェックすべきな『きらら』に迫ります! (五十嵐ミワ)
http://www.shogakukan.co.jp/pr/saraba/
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