就職活動は何かと迷いがつきもの。業界・企業研究や自己分析、インターンシップなど、就活に向けて動き出し始めてみたものの「何が正解かわからない」「いったいどうすれば…?」と悩んでしまうことも多いですよね。
そんなあなたのために、「面接をする人」を育成している就職活動のプロ、飯塚彩さんと角田瑞樹さんにお話をうかがいました。
リクルートマネジメントソリューションズ アセスメントサービス開発部 主任研究員 飯塚彩さん
キャリアコンサルタント。採用・就職、リテンション、人材開発、組織開発、メンタルヘルス、キャリアなど、人・組織に関する幅広い領域のサービス開発、コンサルティング、研究活動に従事。
リクルートマネジメントソリューションズ アセスメントサービス開発部 研究員 角田瑞樹さん
人材紹介事業において企業の採用活動を支援、採用人数500名以上の大規模プロジェクトにも携わる。現在は企業の面接者やリクルーター向けに研修を提供。
Contents
最初に、現在の就活事情をおさらい!
2022年現在、大学3年の6月あたりから、合同説明会などのイベントや、各企業が開催しているインターンシップが始まります。それと並行して、業界や企業研究や、自己分析を行います。
選考自体は、3年生の終わり際の3月に会社個別の説明会が始まり、6月には本格的に選考を始めているところが多数。
コロナ禍の影響で、多くの企業がオンラインでの説明会や面接を実施することが一般的になったため、そういったPC操作に慣れておくことも重要です。また、直接採用の可否につながることはありませんが、もし普段お使いのメールアドレスが、プライベートで使うぶんには問題ないけれど、企業の方にお伝えするのはちょっとくだけすぎかもしれない…というアドレスの場合は、就活用のメールアドレスを準備しておくことをおすすめします。
Q.自分に合う就職先を見つけるためにはどうしたらいいですか?
A.ひとつひとつ、実際に行動してみましょう
何が本当に自分にフィットするのか、最初からわかる人はそういないはずです。最初はあまり業界を絞りすぎるのではなく、いろいろな企業を見たり、多くのイベントに参加して話を聞いたり、周囲の就活生と情報交換をしたりして、視野を広げることも大切。同世代の友人、ひとつ上の先輩、就活イベントで会った人。幅広く情報収集することで、今まで見えてこなかったものが見えてきます。
そうやって行動することが、自分に合った企業への出会いにつながります。
興味を持ったところを起点に、どんどん深めてみてください。たとえば「ハウスメーカーが気になる」と感じたら、業界の中で有名なところ以外も見てみると、いい出会いがあるはずです。
また、いわゆる「BtoC企業」と呼ばれる、一般消費者向けに商品を販売している企業であれば、おなじみのサービスから企業にたどり着くことができますが、「BtoB企業」という、企業向けのサービスを提供している企業も、面白い企業がたくさんありますよ。
さらに、実際にその企業で働く方の話を見聞きして、「こういう仕事、素敵だな」と思えるやりがいポイントを見つけるといいですね。各企業の採用サイトでもインタビューが掲載されているので、いくつか読んでみてください。
以前支援した学生さんで「接客業がいい」という方がいました。なぜかと聞くと「人と直接ふれあう機会がある仕事がいい」とのこと。そのやりがいポイントを起点にお仕事を探し、その方は人材派遣サービスを提供している企業に入社されました。当初考えていた接客業ではありませんが、派遣スタッフさんのフォローなど、近い距離で人とコミュニケーションを取りながら仕事をできるところがフィット。
普段のアルバイトなどの経験から、どんなときに働く楽しさを感じられるのか、ぜひしっかりと考えてみてくださいね。
Q.自己分析って、結局何をすればいいんですか?
A.「興味関心があることの掘り下げ」と「やりたくないことの洗い出し」です
「好きなことはあるけれど、それをどう仕事探しに結びつけたらいいかわからない」という方は、「好きなこと」について、さまざまな角度から見てみてください。
たとえば「コーヒーが好き」だとしましょう。そのとき「なぜコーヒーが好きなのか?」ということを掘り下げて考えてみると「味が好きで、豆の買い付けをしてみたい」「コーヒーを飲む時間が好きで、落ち着ける空間やインテリアを提供することに興味がある」「接客やサービスが好きだから、カフェに勤めたい」など、人によって違う考えが出てきて、そこから「自分はこんな業界がいいのでは?」と広げられます。
また、サービスの受け手としては好きだけど、「別に提供したいわけではない」ということもあるので、提供する側の情報を集めたり、可能なら実際にアルバイトをしてみるのもおすすめです。
Q.転勤したくありません。就活で伝えてもいいですか?
A.したくないことは一度「なぜ?」を考えてみて
「やりたくないこと」も、ひとつの軸になります。「転勤したくない」が譲れない条件であれば、転勤が多い企業は候補から外れます。でも「そもそもなぜ転勤したくないのか」を、もう一段掘り下げて考えてみてください。そして「本当にできないこと」と「やりたくないこと」は分けて考えましょう。
たとえば「家庭の事情で、週に何日かは介護のフォローをしているので、実家を離れられない」ならば、面接の際に丁寧なコミュニケーションをとったほうがいいです。仮にここを隠して入社して、入ってからこの話をすると、思っている以上に大変なことになります。
「やりたくない」なら、友人関係を大切にしたいのか、住む街に思い入れがあるのか、仮に転勤したら自分はどう感じるのか。掘り下げていくと、意外と「譲れない条件」だと思っていたことが、実はそうではなかった、ということもあります。あらゆることに「なぜそう思う?」と自分に問いかけていくことで、より自分にフィットした仕事が見つかるはずです。
Q.自分の得意・苦手はどう見つけていったらいいですか?
A.何人かに聞いてみると客観的に見えてきます
得意・不得意は「スキル面」と「性格面」があります。
意外とどちらも、自分ひとりではなかなかわからないものですし、ひとりで自分のことについて考えていると終わりがなく、つらくなったり、どんどんわからなくなっていきがちです。
家族や周囲の友達に「自分ってどんな人?」と聞いてみることをおすすめします。
その際に、できればいくつかのコミュニティで聞いてみてください。たとえば、ある人が「同じクラスの人の間では積極的なほう」であっても「アルバイト仲間内では、特に普通くらい」など、所属する場所によって相対的にどう思われているかが変わってきます。
Q.何千人ぶんものエントリーシートが来るなかで、周囲と差をつける方法はありますか?
A.「企業が、学生の何を知りたがっているのかを考える」こと
ESは「質問されたことに対して、意図を汲み取り、しっかりと答えること」が最低条件。さらに「その人の人となりが、短い文章で伝わる」ことも大切です。
各企業は「自社にはこういう人が合いそうだ」という人物像をある程度持った上で、それを見抜くために、ESの質問を作成し、就活生に投げかけています。そのため「この質問文は、何を求めているのか」をしっかりキャッチして、回答してください。
100社あれば、100通りの求めている人材像があります。そこにフィットするように、自分の中にいくつ打ち返せるネタがあって、正しくアピールする手段があるかが重要です。
「自分がどんな人で、どんな具体的なエピソードを話せるのか」棚卸ししながら学生生活を送ると、いざ就活本番のときにあたふたしません。
Q.「具体的なエピソード」を求められることが多いですが、特に大学生活で目立った話がありません。どうしたらいいですか?
A.大切なのは「派手さ」ではなく「主体的な取り組みや想い」です!
つい「所属していた団体の規模が大きい・歴史がある、多くの人が関わるプロジェクトに携わった、厳しいゼミだった、なんらかの賞を取った」など、張り切って派手さをアピールしてしまう気持ちはわかります。でも、それはあまり評価になりません。それよりも「その方自身が、心の底から考えて行動して、トライ&エラーした、結果とプロセス」のほうが大事だと思います。
派手なエピソードがあっても、そこにあなた自身の考えがあまりなく、上っ面なものであれば、人事の方も見抜きます。もしESを通過しても、面接で掘り下げたときにはバレてしまいます。もしトライしたことに失敗しても、「どんな思いで取り組み、何を学んだか」をお話できれば問題ありません。ビジネスも「うまくいかないこと」のほうが多いです。そのなかでどう状況を捉えて次につながる行動ができたかは重要です。
企業が求めているのは「主体性」です。自らさまざまな状況や場面に応じて、自分なりにどう考えて物事に取り組み、何を学んだかを話せるといいですね。
その方が力を入れてエネルギーを注いだことなら、勉強でも、中高時代の部活でも構いません。特に今はコロナ禍で「留学やサークル活動など、思ったようにやりたいことができなかった」ということもあると思います。その場合は、「コロナ禍の制約がある状態で、どう考え、どう行動したか」を話せるようにしておきましょう。もし、留学に行きたかったけど行けなかったのなら、本当は留学を通して何を体験したくて、留学の代わりにどんな活動をしたのか、そういう話は魅力的に映るはずです。
もし今何もなければ、大学3年生の方なら、これから取り組んでいけばOKです。「就活のためにする、面接受けが良さそうなこと」ではなく、「あなたが本当にやりたいことを学んでみる」「やりたい仕事につながりそうな小さなことを行動してみる」ことがおすすめ。繰り返しますが、重要なのは「派手さではなく、あなた自身が何を考え、どう行動し、何を得たか」です。
そして、どんな企業であっても、ESや面接から「どんな仕事ぶりなのか想像したい」という意図があります。「その人が、どんな状況でもとれる思考や行動を確認したい」のです。だからこそ派手な特殊な経験よりも、何度も繰り返している自分の行動や「違う状況でも、自分はこう考えてこのような行動が取れます」という話を用意すると、企業も入社後のイメージがしやすくなります。
Q.面接官は実際どんなところを見ているのでしょうか?
A.オンライン時代は「話し方」がこれまでより重要に
オンライン面接の場合は、従来の対面面接よりも「言語情報」が重要になる傾向があります。対面では伝わる細かい表情の動きや身振り手振りが限られてしまうぶん「いかに質問に端的に答えるか」「相手との間合いを気にしながらコミュニケーションを取れるか」をより心がけてみてください。
お話をする中で「あなたが伝えたいこと」と「相手に伝わっていること」が話の中できちんと一致しているかを意識することもポイントです。友達や大学の先輩、リクルーターの方に伝えてみて、フィードバックをもらいながら調整していってみてください。
また、第一印象でマイナスな印象になってしまってはもったいないので、最低限の身だしなみや失礼のない所作であるかどうかは気にかけてくださいね。
Q.もしも第一志望の企業に落ちたら…どうしたら良いですか?
A.就活は「受かるか受からないか」ではなく「合うか合わないか」です
何より知っていてもらいたいのは、企業側は学生に優劣をつけているわけではなく、合うか合わないかを判断しているということ。あくまで平等に「選び、選ばれる」関係のマッチングです。もし不採用になったらそれは「合わない」ことを教えてくれたのです。
私たち自身も社会人の立場になって思うのは「不採用だった企業にもし採用になっていたとしても、合わなかっただろうな」ということ。求められていることと持っているものが違えば、採用につながりにくいです。たとえるなら、どれだけおしゃれで書きやすく素晴らしいペンがあったとしても「何かを切りたいとき」に選ぶのはペンではなく、ハサミですよね? それと同じです。
結局のところ「幸せな就職」は「当初の第一志望に受かったか、受かっていないか」ではありません。第一志望ではなかったとしても、入社した企業で何を学んで何をしていきたいのか、その想いをしっかり持てるなら、結果的にそれはとても幸せな就職。入社後に活躍できる人になれるはず。その意味づけができることが、実は重要なのです。
すべてに共通していたのは「自分の考えに本当にもとづいた行動ができるかどうか」。
つい、企業に合わせたり先輩の話を聞いたりして「受かりそうな話」を念頭にエピソードを作ってしまう人もいると思いますが、それより先にやるべきことは「あなた自身がどう考えているか」を見つめ直すこと。「自分は本当はどうありたくて、何をしたいのか」を意識して自分に合った企業を見つけ、後悔のない就職活動をしていきましょう!
構成/柿沼亜里沙、後藤香織