アイディアのストックは1000個越え!ネタが尽きない超人気ミニチュア作家・田中達也さんの頭の中。

Instagramのフォロワーが400万人を超える、超人気ミニチュア作家・見立て作家の田中達也さんの作品集「MINIATURE LIFE 365 田中達也の今日の1枚」が大人気発売中です。

日用品を別のものに“見立てる”アート「MINIATURE LIFE」を、InstagramやX、運営するホームページで毎日発信し続けている田中さんの活動15周年を記念した、394ページの大ボリュームとなる本作。15年間に制作・撮影された5000点以上の作品群の中から「1ページ1日1作品」とし、1年分=365点の作品を厳選。「自分基準で作品を選びたくなかった」という田中さんのこだわりから、伝統行事や「○○○の日」とリンクする作品を掲載。

たとえば1月1日は、おせちを初日の出に見立てた「おせちを開けて年が明ける/First Sunrise」

5月5日は、日本酒の酒器を鯉のぼりに見立てた、「大人のための鯉のぼり/These carp streamers a ren’ t for kids!」など、遊び心溢れる作品が多数収録されています。

「どうして毎日こんなクオリティのものを作り続けられるんですか?」「アイディアが尽きることはないんでしょうか?」などなど、日頃の制作裏話やこちらの書籍について、田中さんご本人に直撃しました。

―改めてよろしくお願いします。まず、現在のような「ミニチュア写真」を撮り始めたきっかけを教えてください!

趣味として写真を撮り始めようとしたとき、何を撮ろうか考え、趣味で集めていたミニチュア人形を被写体にしました。「どうやったら共感を得られる作品が作れるだろう」と考えているうちに、今の、ある何かを他のものに結びつける「見立て」が生まれました。

コンタクトを傘に見立てた「乾いた目に潤いを」。

ひまわりを花火に見立てた「花見大会」。

―この「見立て」のアイディアは、どうやって思いついているのでしょうか?

筋トレのような感覚で、1日5つくらいは考えています。自分の目の前にあるものばかり見ていてもなかなか広がらないので、外に出て、モノや風景を見て刺激を受けるようにしています。すると、アイディアが生まれることが多いです。特によく行っているのは、「買い物に行くこと」。なじみ深い日用品がそろう、コンビニやスーパー、100均に買い物にいきます。そこで見つけた身の周りのモノを「見立て」に使うことで、より共感されやすいアイデアが生まれます。すぐにパッと何かに見立てられず、その場ではアイディアが思いつかなくても「なんとなく、今の自分はこれが気になるな、いつかアイディアに結びつきそうだな」と勘が働いたら、一旦買って後で考えます。

―その勘はどういうときに働くのでしょうか。

「みんなが知っているけど、そういえばこれまで作品に使っていなかったもの」を見かけたときです。そういったものは、だいたい後から何かしらに使うことが多いので、そういった蓄積からピンときます。ごく少数の人しか知らなさそうな謎の部品をモチーフにすることはほぼないですね。

―今、この空間にあるもので何か「見立て」を行うとしたら、どうなりますか?

そうですね…たとえばあそこに青いハンガーがあります。ハンガーって、まず形を見ると山っぽいじゃないですか? すると、「何か山と関連して見立てられそうだな」と思いつく。でも、色もあわせて見ると「青いハンガーだから、サーフィンの波にもなるんじゃないか?」と気付けます。でも、もし家に木製のハンガーしかない場合、それだけを見ていてもなかなか「波」にはたどり着けません。

―ちなみに、アイディアが出なくて困ることはないのでしょうか…?

思いついたらすぐスマホにメモをしているのですが、今、ストックが1000個ほどあります。

―1000個!(衝撃)どんなメモをしているのでしょうか?

本当に一言です。「パスタでドラムサウナ」「卵でエステ」など、「○○で○○」という形式で、それ以上は書きません。あとは、そのメモを見ながら現場で作りながら考えます。逆に、一言以上の説明が必要になるときは、だいたいよくないアイディアです。メモを後で見返して、その一言だけで「そうだ、こういうアイディアだったな」と思い返せるものが、いい作品になります。もちろん、「これなんだっけ?」と、わからなくなるものもありますよ(笑)。

―後でわからなくなることはどのくらいあるんでしょうか?

だいたい全体の2割程度ですね。ただ、アイディアは面白そうに見えて、作ったら面白くないものになったことも結構あります(笑)。でも不思議なことに、一度で諦めず、アイディアのメモを残しておいて、別の日に作るといい感じに仕上がることもあります。その日の自分のコンディションや、10万個はあるフィギュアから何を見つけられるか…まったく変わります。フィギュアは3Dプリンターで作ったり購入したりしてどんどん増えているので、うまく実現できなかったアイディアが、1年経つと「なんで前はこれを作れなかったんだろう?」と、突然ピタッとハマることもあります。それは、毎日やっているからこそできることだなと思いますね。

―まず、SNSに作品を載せ始めた初期から毎日新作を発表し続けていることが驚きなのですが、正直最初のうち「もうやめようかな」と思ったことはないのでしょうか?

最初は、実は100日くらいでやめようかなと思っていました(笑)。自分の結婚式までのカウントダウン企画のつもりでやっていて「結婚式の次の日にはやめよう」と思っていたら、当時働いていた会社の社長が結婚式の挨拶で「田中がこういう面白いことを毎日やっているから、ぜひインスタグラムを見てあげてほしい」と言ったんです。そう言われると、次の日にやめるわけにはいきません(笑)。そこから続けているうちに、いつかやめるなら、せっかくなら写真集を出してからやめようという気持ちになりました。でも、いざ写真集を出したら、その写真集をきっかけにNHK連続テレビ小説『ひよっこ』のオープニング映像をはじめ、さまざまな依頼が来るようになり、どんどん新しく目標ができていき、今に至ります。

―「毎日作品を発表する」は生半可なことではないと思います。読者からも「何かを始めたいけど、続かない、三日坊主になってしまう」という声を聞きますが、どうしたら継続ができるのでしょうか?

最初から結果を求めないことと、続けられる方法を考えることです。

もし「展覧会やりたいからこうしよう」「本作りたいからやってみよう」「何万フォロワー目指そう」が最初に来ていたら、きっと続かなかったと思います。最初から「何万フォロワー目指すぞ」が目的だったら、どれだけ頑張ってもそこに達しなければ、やめていた。「楽しいから、結婚式までの100日だけ、ちょっとやってみるか」くらいの感じが積み重なったから、今がある。「作ること」が目的であれば、作り続けている時点で目的が達成できます。その後に、何かがついてきたらラッキーだけど、そこありきで始めると、辛くなってしまう。

とはいえ、昔から「一度始めたことをやめずに続ける」ことは得意でした。学生時代は毎日三味線を弾いていたり、タバコを吸っていた時代は、見つけられる限り全部のタバコの箱を集めて壁に貼ったり(笑)。むしろ、継続して蓄積されるものが好きなので、「毎日続けられないと思ったら、始めない」タイプです。もし知り合いから「運動不足なら、ランニングでもしてみたら?」と勧められたとして、毎日外を走るのは、雨の日はきついだろうし、持続可能じゃないなと判断して、「やらないです」と答えます。でもたとえば、天気や気温に左右されずに走れるルームランナーを買って、毎日映画を観ながらだったら続けられるかもしれない、など「自分が続けられる方法」は一度考えてみます。
習慣化することは、今の自分の暮らしを無理に変えずにできることから始めないと、なかなか難しい。僕は元々プラモデルが好きで、プラモデルを作っている時間を徐々に作品制作にシフトしていったので、自然に続けられました。1日24時間であることは変わらないので、今自分が使っているどの時間を新しい習慣に置き換えるか。そう考えるところから始まると思います。

あとは、普段はそうやって持続可能性を大事にのらりくらりと生きながら、「これやりたい!」と思ったら全力で力を入れる。今回の本もそうです。しっかりとスケジュールを確保して時間をかけたいので、その時期は「これを受けてしまうと、大事なことに力を注げなくなってしまうな」と判断して、お断りしてしまう仕事も通常より増えます。

―「断る仕事」はどのように判断していますか?

僕の場合は、普段から「後に残らないもの」は基本的にはやりません。例えば広告の案件で、キャンペーンで3か月だけの企画で、それが終われば消えてしまうものは、ちょっと違うなと。そして「毎日の作品制作が持続できなくなってしまう仕事」はやりません。楽しんで作り続けるためにお金を稼いでいるので、お金を稼ぐことによって毎日の制作が絶たれるのは、なんのためにやっているのかわからなくなり、本末転倒です。「なんのために作品制作しているんですか?」と聞かれることもありますが、これは「毎日続けるためにやっている」です。すると「毎日続けることで何があるんですか?」と聞かれますが、その先に何があるかはわからない。でも、きっと多くの人はそこに「何か」を求めるのでしょう。だから苦しくなり、続かないのかもしれない、と、見ていて思います。今は、健康でいる限り続けるつもりです。

―ちなみに、ひとつの作品にだいたいどのくらい時間がかかるものなのでしょうか?

ストックの中からアイディアを選び、モチーフを配置して、写真を撮影し、作品名を考え、SNSに投稿するまでるまでの一連の流れで、平均3~5時間ほどです。他にも展覧会の仕事など、何かしら仕事があるので、これ以上時間をかけると、毎日続けるには負担になってしまいます。

作品名は、必ず作品を撮り終わった後に考えるのですが、すぐ出るときもあれば、1時間以上悩んでそれでもうまくまとまらず、「一回別の仕事をして、後でもう一回考えよう」ということもあります。考え方のコツは、「見立てる前のモチーフに関係する言葉」を20~30個出して、「見立てた後の風景」に関する言葉をさらに20~30個出します。その20~30個の言葉同士を比べていくと、たいてい似ている言葉が見つかります。それをうまく掛け合わせると、作品のタイトルができあがります。「ダジャレ」と言われますが(笑)、僕としては「言葉の見立て」だと思っています。この「言葉の見立て」は、日本人になじみ深いもの。たとえばおせち料理も、鯛は「めでたい」、昆布は「よろこんぶ」、黒豆は「まめに働く」などと言われますよね。商品名や広告のキャッチコピーにも「言葉の見立て」が数多く使われています。この「言葉の見立て」で、作品をより印象深く覚えていただけたらうれしいです。

5月13日の「愛犬ダイスき/Dicematian」。サイコロをダルメシアンに見立てている。日本語では「ダイス」、英語では「ダルメシアン」をもじったタイトルに。

6月9日の「スシロックフェスティバル/Rock’n Sushi Roll」。日本語は言わずと知れた超有名フェスのもじり、英語はロックンロールのもじりと、掛け合わせのセンスが光ります!

―今回の作品集について、膨大な15年間のアーカイブの中から選ばれたとのことですが、作品ってすべて覚えていらっしゃるものなのでしょうか?

いえ、過去の作品を洗い出して、パソコンでデータを並べ、それぞれの記念日に照らし合わせて、より良い組み合わせを考えていました。「ちょっと似ている作品がここにあるから、これを変えよう」「あえてここは似た作品を入れよう」など、流れを考えながら組み合わせを考えていくのは、「彫刻を作る」ような感覚でした。漠然と並ぶ作品群から、少しずつ何度も全体像をなぞるうちに形がはっきりしていく…。最初はざっくり荒削りに作り、徐々に細かいところを削っていきました。

―田中さんって、普段から世界をどう見ていらっしゃるのか気になっていたのですが、やはり「彫刻を作る感覚で、どの作品を収録するか考える」など、感性がやはり素敵で。なかなかない感性を持っているように思うのですが「自分は人とちょっと違う見方で、世界を見ているのかも」と思うことはありますか?

そうですね…以前デザイナーとして働いていたこともあり、「人に説明するときは、何かに例えたほうが面白くてわかりやすい」と思っているので、何かに例える癖がある気がします。例えること自体も「見立て」です。これまでの作品を選び抜いた『MINIATURE LIFE 365 田中達也の今日の1枚』、ぜひ多くの方にご覧いただけたらうれしいです。

『MINIATURE LIFE 365 田中達也の今日の1枚』
著/田中達也
定値4,950 円(税込) 
判型:A4判変形 394 ページ
小学館
https://www.shogakukan.eo.jp/books/09682520
▼お話をうかがったのは…
ミニチュア写真家・見立て作家 
田中達也さん
1981年熊本生まれ。2 0 1 1 年、ミニチュアの視点で日常にある物を別の物に見立てたアート「MINIATURE CALENDAR」 を開始。以後毎日作品をインターネット上で発表し続けている。展覧会「MINIATURE LIFE展 田中達也見立ての世界」「田中達也展 みたてのくみたて」が国内外で開催中。Instagramのフォロワーは400万人を超える(2026年1月現在)。著書に『MINIATURE LIFE』『Small Wonders』『MINIATURE TRIP IN JAPAN』『みたてのくみたて』など。絵本に『くみたて』『おすしが ふくを かいにきた』『めだまのスポット』などがある。

https://miniature-calendar.com
Instagram@tanaka_tatsuya
撮影/黒石あみ 構成/後藤香織