【基礎知識】「能」「文楽」「歌舞伎」何がどう違うか説明できますか?

2013年に歌舞伎座がリニューアルオープンしてから、さらに注目が集まっている日本の伝統芸能。
歌舞伎をはじめ、能や文楽などさまざまなものの名前は聞くものの、「ぶっちゃけ違いがわからない!」という方も多いのではないかと思います。そんなあなたのために、『和樂』6月号にて立正大学文学部文学科准教授の矢内賢二さんが「能・文楽・歌舞伎」の基礎知識をわかりやすく解説しているのを発見しました。

【基礎知識】「能」「文楽」「歌舞伎」何がどう違うか説明できますか?

【能】

確立された年:1300年半ばごろ
確立された地:奈良
大成者:観阿弥
演者の構成:主役のシテ、シテの相手方のワキ。そして、演奏担当の囃子方(笛、小鼓、大鼓、太鼓の計4人)が加わる。演目により狂言方が入ることも。すべてが分業の世襲制。
主なテーマと登場人物:「神」(脇能)、「男」(修羅物)、「女」(鬘物)、「狂」(雑能)、「鬼」(切能)の登場人物に分類されます。
見どころ:『葵上』に代表される女の情念ものは、言葉がなくても役者の発する情が舞台に立ち上るのが見てとれ、演劇の原点のようです。

何より、「能面」のインパクトが強いですよね。
創成された当時から、ずっと時の権力者の保護を受けていた、というのが文楽・歌舞伎とは違うところ。興行を成り立たせるために大衆の意見を取り入れる必要性がなかったため、能は一貫して確立された様式が続いています。

 

【文楽】

確立された年:貞享元年(1684年)
確立された地:大坂
大成者:竹本義太夫
演者の構成:「語り」と演出を担当する太夫、三味線、人形遣い。それぞれ江戸時代から続く家系はありますが、厳密な世襲制はありません。
主なテーマと登場人物:江戸以前の物語が描かれた「時代物」と、江戸時代の現代劇「世話物」が主な題材。世話物の第一作『曽根崎心中』などの心中ものは現代でも人気。
見どころ:「世話物」のほうが親しみやすいと一般的には言われていますが、「時代物」のほうが、物語の骨組みのスケールが大きく味わい深いという一面もあります。

もともと「語り物」であった浄瑠璃と、人形芝居が江戸期に一体化して生まれたもが人形浄瑠璃文楽は、その人形浄瑠璃の代名詞になっています。「文楽」という名は19世紀に活躍した興行師・植村文楽軒の名にちなんでいます。

 

【歌舞伎】

確立された年:元禄年間(1688~1704年)前後
確立された地:上方・江戸
大成者:坂田藤十郎、市川團十郎など
演者の構成:大きく分けると成人男性の「立役」と、男性が女性を演じる「女形」の二役。坂田藤十郎、市川團十郎など、歌舞伎創始期から続く役者名(名跡)を襲名することで芸を継いでいく。
主なテーマと登場人物:時代物と世話物の演劇、そして舞踊の3要素で演目を構成。人形浄瑠璃や能楽からいいとこどりをした脚本も歌舞伎の良さ。
見どころ:舞踊に物語性はありません。江戸時代の人間と空間が舞台の上に出現したと思って、「物語を味わう」ではなく「詩や絵画を楽しむようにうっとりと鑑賞する」イメージで見るとより楽しめます。

男性が女性を演じるにあたり、長い時間をかけて確立された型と芸が見どころ。ほかにもお化けも動物も、役者が自分の体を使って扮するのが歌舞伎の面白さ。動物の役でも衣装や化粧、しぐさに伝統的に培われた型があります。

 

どれも「日本の伝統芸能」でなんとなくくくってしまいがちですが、比べてみると違いがわかりやすく、それぞれの面白さがありそうですね。これが面白そうかも、と思った機会に、伝統芸能鑑賞デビュー、してみませんか?(後藤香織)

『和樂』2014年6月号表紙
(『和樂』2014年6月号)

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