各地方で調理法が変わったり、屋台でおなじみだったり、はたまた家庭料理やコンビニの人気メニューでもあったりと、そのポピュラーさは国民食ともいえる「おでん」。
おでんの歴史は古く、なんと室町時代には食べられていたそう。もともとは、田楽と呼ばれる、味だれをつけた料理のことでした。
その後、今のような出汁で煮込まれた料理が「関東炊き(江戸時代、しょうゆづくりが盛んだった銚子や野田などの関東地方で、しょうゆと出汁で煮込んだおでんが発祥したことから、その名がついたと言われている)」という名で普及し、今ではこちらのほうがおでんとしてポピュラーとなりました。
『Precious』2月号では、そんなおでんを堪能できるお店を「老舗」「通(つう)の店」「話題の店」とわけ、3つご紹介しています。
【老舗】いつでもいつまでも食べたくなる淡麗品格系おでん「やす幸」(銀座)
「創業者が酒好きでしてね。お酒に障らないような料理をということで、うちのおでんには、アクの強いものは入っていないんですよ」と3代目の松井俊樹さん。
毎日つくり変えるという出汁は昆布と鰹。出汁で煮込む、というよりも素材の味を引き出すように仕上げてあります。そのおでんは、まさに冬がおいしさの盛りを迎えるとか。
「おでんの出汁は、不思議なもので季節を知っている。冬になるとおいしくなる、と初代は話していました。タネのうま味と相まって、この季節は最高の味になります」。愛され続けるおでんの旬は、まさに今なのです。
【店舗情報】
「やす幸」
住所:東京都中央区銀座7-8-14
電話:03-3571-3467
営業時間:
月~金 16:00~22:00(L.O.)
土日祝 16:00~22:00(L.O.)
休:無休(12月31日~1月3日を除く)
コース:¥6,000~
【通の店】おでんの概念を一新させた一軒家レストラン「びのむ」(西麻布)
昭和の民家を改築した「びのむ」のコンセプトは、「ワインとおでんのマリアージュ」。鴨のスープをベースに、トマトや半熟玉子のトリュフのせなどといったタネが大鍋の中に浮かびます。
「最初は、本当に合うの? といぶかしがる方もいらっしゃいますが、鴨のスープは酸味との相性がいいので、ワインが進むんですよ」とオーナーソムリエの徳原誠さん。常時200種ほどそろえているワインは、「びのむ」の料理を考えてセレクトされたシャンパーニュや白ワイン、赤のピノ・ノワールなどが並びます。
おでんという料理の伸びしろを実感できる、まさに通好みの良店です。
【店舗情報】
「びのむ」
住所:東京都港区西麻布4-8-6
電話:03-5980-8252
営業時間:
17:30~22:00(L.O.)
休:日曜・祝日
コース:¥8,000~
【話題の店】出汁の四重奏がおでん料理に奥深さを与える「味のなかむら」(西麻布)
昨年7月にオープン。「季節の食材を思う存分楽しんでほしい、が信条。グランドメニューは毎月刷新し、加えて日替わりのメニューもあります」と中村基料理長。
メニューには、「とらふぐの叩き 下関」「毛ガニ 釧路」「おつまみカキフライ 三陸」などどれも大人の食いしん坊ならグッとくる料理ばかりが、産地も明記され並びます。刺身は、それぞれ最適な食べ方で味わってほしいと、盛り合わせはやめ、一品一品提供。季節……いや、メニューが変わる月ごとに通いたくなる店です。
【店舗情報】
「味のなかむら」
住所:東京都港区西麻布4-7-10 麻布笄町Aハウス
電話:03-6434-1007
営業時間:17:30~22:30(L.O.)
休:無休
コース:¥5,800~
出汁だけでなく、タネごとにしっかりと下ごしらえをすることが、おいしいおでんには非常に重要なこと。店によって下ごしらえの仕方が違うこともあります。そしてこの、下ごしらえを重要視するという姿勢は、日本料理の基本でもあります。
最近では「びのむ」のように、おでんの新しい楽しみ方を打ち出すお店も出てきており、昔からなじみのあったおでんですが、その可能性はまだまだ広がりそうです。(鈴木 梢)
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