ゆるい靴でも「靴ずれ」ができるのは、どうして?靴ずれの本当の原因を専門家に聞きました

少し前に外出自粛が解除され、またパンプスを履く日常が戻ってきました。久しぶりに履いた靴で「靴ずれ」を起こしていませんか?
知らないうちにできる、靴ずれ。怪我というほど大げさじゃなくても、けっこう痛くて厄介ですよね。

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そこで今回は、オーダーメイドパンプスのブランドで500人以上の靴型を制作してきた靴の専門家・島倉和也さんに、「靴ずれを予防する正しいコツ」を伺いました。

■コツを教えてくれるのは……

島倉 和也さん:世界初の「サブスクで履くオーダーメイドパンプス」を提供するブランド「AYAME」にて、計測した足形から靴型のデータを作製・3Dプリントするサービスを開発。現在はオーダーメイドパンプス靴型設計最高責任者として活躍中。これまでに500人以上の靴型を作製している。

■靴はきつくてもゆるくてもNG。靴ずれができる3つの原因

Q.そもそも「靴ずれ」が起きる原因は?

A.
靴ずれができる主な原因は、次の3つです。

【原因1】靴のサイズが大きい

意外かもしれませんが、「きつい靴」よりもサイズが大きすぎる「ゆるい靴」のほうが、靴ずれの原因としては多いです。

とくに足幅(横の長さ)が広い人は、本来の足長(タテの長さ)より大きなサイズの靴を選ぶことが多く、靴の中で足が前後に動いて靴ずれしやすくなります。

たとえば足長23.5cmで幅広な足の場合、市販されている23.5cmの靴では幅が合わず、足が入りません。そのためサイズを上げて24.0〜24.5cmくらいの靴を選びますよね。

すると、かかとがパカパカして脱げやすくなったり、足が靴の中で前後に動いたりして、靴ずれができてしまうんです。

【原因2】足のサイズに左右差がある

左右で足のサイズが異なる場合も、同じ理屈で靴ずれができやすくなります。

左右でサイズが異なる場合、靴は大きい足に合わせて選ぶことが多いもの。すると小さい方の足には、靴との間に余分なスペースが生まれます。

この状態で歩くと靴の中で足が前後に動いてしまいやすく、かかとや指先が擦れて靴ずれが生じます。

【原因3】骨が出っ張っている

足の骨が出っ張っている人の場合、その部分がどうしても靴と当たってしまい、靴ずれを起こしやすくなります。

指、関節、かかとなど、骨が出っ張っている人はとくに要注意です。

Q.靴ずれができるのは「靴がきついから」だと思い込んでいましたが、そうとは限らないのですね。

A.
靴ずれは「ゆるい靴」と「きつい靴」の両方で起こりますが、じつはほとんどのケースが「ゆるい靴」が原因なんですよ。

それぞれで靴ずれが生じるメカニズムを知っておくことで、対策がしやすくなると思います。

【ゆるい靴の場合】

足と靴の間に余分な隙間ができるため、足が靴の中で動いてしまい、つま先・指の側面・かかとなど、足の一部が擦れて靴ずれが起こります。

【きつい靴の場合】

足が靴の中でまったく動くことができず、常に足の骨が靴に当たり続けてしまうことで、靴ずれが起こります。窮屈な靴による靴ずれは、骨が出っ張っている箇所に発生しやすいです。

Q.とくに靴ずれができやすいのは、足のどの部分ですか?

A.
「小指」「人差し指・中指・薬指の上面」「かかと」の順にできやすいです。基本的には骨が出っ張っている部分が靴ずれしやすいので、指や関節部分が多くなります。

とくに新品の靴の場合、つま先とかかとの部分に入った型崩れ防止用の「芯」が硬いため、靴ずれを起こしやすくなります。履き始めは短い距離・時間で慣らし、少し足になじませてから長時間履くのがオススメです。

Q.靴ずれが新品の靴でできやすく、履き慣れるとできにくくなるのは、何故ですか?

A.
靴は、履いているうちに材料そのものが伸びたり柔らかくなったりするので、足が擦れにくくなります。また、靴の表面が少しずつ伸ばされることで足の形になじんでいくため、だんだんと靴ずれしにくくなるのです。

ただし、逆に「新品の状態では足に合っていたのに、履いているうちに合わなくなる」というケースもあります。これも靴の材料が伸びたり柔らかくなったりして靴がゆるくなってしまうのが理由で、あまり意識していない人も多く注意が必要です。

■パンプスに多い「かかと」の靴ずれ。ベストな予防法は?

Q.パンプスでは「かかと」の靴ずれがとくに気になります。かかとに靴ずれができやすいのは何故ですか?

A.
靴は本来、かかとを包み込んで脱げづらいように設計されているのですが、かかとの大きさは人それぞれ違います。

靴メーカーの想定よりも実際のかかとが小さい場合、靴がかかとをホールドできずにパカパカ脱げやすくなってしまいます。そうすると、かかとと靴が擦れて靴ずれになってしまうのです。

市販の量産靴のかかと部分は、できるだけたくさんの人の足が入るよう大きめに作られていることが多いもの。その分、かかとが小さい人は靴ずれができやすいと言えます。

Q.かかとの靴ずれを予防する、効果的な方法は?

A.
まずは、自分のかかとのサイズ感(大きい・標準・小さい)を把握しておきましょう。

かかとの大きさは、かかとの幅で決まります。下記の「かかとの大きさ基準表」で、ご自身のかかとが小さいかどうかを測ってみてください。小さい場合は、かかとがパカパカして靴が脱げやすい足ということになります。

▲上記イラストの矢印の部分が「かかと」のサイズです。

▼下記の表で、靴のサイズ(足長)×かかとの幅を照らし合わせ、自分のかかとのサイズ感を知っておきましょう。

Q.「かかとが小さい=靴が脱げやすい足」の場合、靴ずれを予防するにはどんな対策がオススメですか?

A.
かかとが小さい人にオススメなのは、「かかとパット」を使うことです。

靴のかかと部分に貼る「かかとパット」は、クッションの役割を果たす上、小さなかかとでもホールドして動かないようサポートしてくれます。

靴ずれしやすい人は「靴がきつい」と思い込んで、どんどんサイズを上げていってしまう傾向があります。でも必要以上に大きな靴は余計に靴ずれしやすいですし、外反母趾などの疾患につながる可能性もあります。

むやみにサイズを上げるのではなく、大きさがぴったり合った靴を選ぶのが一番。そのためにも自分の足の正しいサイズを知っておきましょう。自分で測ることもできますが、やはり専門店で計測してもらうのがベストです。

私が働く「AYAME」はオーダーメイドパンプスをサブスク(月額)でご提供している企業なのですが、正確な足型を作るため3D計測でお客様の足を測ります。一度そういったサービスを利用してみるのもオススメです。

どうしても靴と足との間に隙間ができてしまうときは、つま先パットやかかとパットなどの道具を使って、きちんとフィットするように調節しましょう。

靴ずれができると「靴がきついのかな?」と思ってしまうかもしれませんが、じつは「ゆるい」ことが原因に繋がっている場合も多いのですね。

自分の足のサイズに合った靴を選ぶこと、ゆるい場合はパットを使って、歩きやすい状態をキープしていきましょう。

次回は、ゆるいorきつい靴を「どうしても履きたい」という場合の対策や裏技をご紹介します!

取材協力/株式会社crossDs japan
構成・文/豊島オリカ