著者・中山七里先生×主演・新木優子さん!『連続ドラマW セイレーンの懺悔』スペシャル対談が実現
2020年10月18日(日)にスタートするWOWOW「連続ドラマW セイレーンの懺悔」(WOWOW・毎週日曜22時)で新木優子さんが主演を務めます。今回、原作者の中山七里先生と主演を務める新木優子さんの対談が実現! 原作やドラマへの熱い思いを語ってもらいました。
まさに“ザ・ミステリー”の原作に衝撃を受けた
編集部……『セイレーンの懺悔』の主人公・朝倉多香美を、新木優子さんが演じられると聞いて、どう思われましたか?
中山七里先生(以下、中山)……以前からテレビなどで拝見しておりましたので、安心してお任せできると思いました。僕よりも娘の方が新木さんのファンでしたからね。主演に決まったと知って、狂喜乱舞していました。お陰さまで、親の格がひとつ上がりました。
新木優子さん(以下、新木)……いえ、そんなそんな。素晴らしい小説をたくさん書かれているので、元から中山さんは自慢のお父様だと思います(笑)。
中山……作家は表に出ることが少ないものですから、子どもは自分の親がどんな仕事をしているのか、あまり実感が持てません。新木さんのような人気女優さんが、原作ドラマに出てもらえるとなると、大喜びで、万歳! となってくれる。親としても作家としても、本当に感謝しています。
新木……恐縮しちゃいます。ありがとうございます。
編集部……新木さんは、普段から小説は読まれるのですか?
新木……はい、学生時代から大好きです。特にミステリーが好きで、『凍りのくじら』を最初に、辻村深月さんの作品は読破しています。あと東野圭吾さんの『ガリレオ』シリーズも大ファン。撮影の合間やロケ地への移動中など、時間があるときは、だいたい本を読んでいます。
中山……ミステリー以外も読みますか?
新木……スポーツ小説も、大好きなんです。松崎洋さんの『走れ! T校バスケット部』は、学生時代に夢中で読みました。
中山……へえ、いろいろ読んでらっしゃいますね。
新木……もちろん中山先生の小説の愛読者でもあります! 『セイレーンの懺悔』は、ドラマの撮影の前に、読ませていただきました。「こうくるだろう」という予想をもって読み進めていたのですが、いい意味で次々に裏切られて、本当に面白かったです!
中山……ありがたいご感想ですね。
新木……本筋の話と、裏に隠れている事件の真相が、複雑に交差しています。構成が練りこまれていて、最後まで事件の犯人が、わかりませんでした。真犯人が明かされたときの衝撃度は、すごかったです。まさにザ・ミステリーという小説でした! 熱く語ってしまって、すみません。
中山……いいんですよ。嬉しいです。今回、新木さんが主演を務めていただくことに、僕は運命的なものを感じています。
新木……私と多香美に、ですか?
中山……ええ。多香美が勤めているテレビ局で置かれているポジションと、いまの新木さんの役者としてのポジションは、近い部分があると思っています。
いま放送業界全体は、コロナ禍のお陰で、変革を迫られています。コロナ禍で、以前のやり方では何もかも通用しなくなっている。昔からのルールやシステムを、変えざるを得ない。そんなとき、風穴を開けるのは、若い人たちです。
『セイレーンの懺悔』では、多香美がテレビ局の古い体質に立ち向かいます。その姿は若くて、役者として伸び盛りの、いまの新木さんと重なります。僕のなかでは現実と小説の世界が、リンクしたように感じているんですね。
新木……なるほど。コロナ禍を想像されてつくった作品では、もちろんないでしょうけれど、結果として時代の大きな変化と、つながってきたということですね?
中山……その通り。小説には、しばしばそのようなことが起こります。
新木……それって、すごく面白いです。
中山……新木さんには、古い体質の芸能界で風穴を開けていただくような女優になってほしい。
新木……すごい! 大役を戴いてしまいました。
自分と組織の“正義”をすり合わせることで人は成長する
編集部……新木さんは多香美のイメージをどのように考えて、撮影に臨まれたのでしょうか?
新木……まず、正義感の強い人だと思いました。けれど正義感のために頑張りすぎて、会社やチームのなかで、すれ違いを生んでしまいます。
ドラマの第2話あたりから、多香美の正義感はちょっと暴走して、周囲とずれてきます。共有されるはずの正義なのに、彼女は周りから浮いた存在になってしまう。演じながら、こういう人は現実にもいるな……と感じました。組織のなかで正義を通していくことの難しさを、あらためて思いました。
中山……人は誰だって、自分なりの正義感を持っていますよね。その正義感を、所属している組織の正義感、世間全体の正義感や、いろんな種類のルールとすり合わせていくことで、内面は成熟していきます。だから苦しくても、正義感を安易に曲げたり、諦めてはいけないんですね。
違うタイプの正義感を辛抱強くすり合わせていくと、両者とも変化して、新しい時代の正義がつくりだされます。多香美が模索しながら成長していくことによって、体質の古いテレビ局も、きっと変わっていくでしょう。
新しい価値観で物事に接することができるのは、若い人の特権です。僕らぐらいの歳では、怖くてなかなかできません。日本のさまざまな分野に蔓延している古い体質を、ぜひ新木さんのような若い人たちに、打ち壊してもらいたいですね。
新木……ご期待に答えられるよう、頑張ります! 多香美のなかの価値観が私のなかで、また新しく動いてきました。これから演じていくうえで、とても大きな参考になります。
“社会人2年目”はトラブルが多い時期
編集部……多香美のキャラクターの解釈が、撮影前と現在とでは変わりましたか?
新木……原作を読ませていただいた直後は、正義感あふれる女性というイメージが占めていました。撮影が続くうち、その正義感のズレに苦しんでいるという、より深い内面が把握できるようになりました。想像していたよりも行動力があるし、24歳とは思えないぐらい、自分の信念にまっすぐ。辛い困難に遭うけれど、多香美は逃げ道を探さないんです。本当に、強い人。そういう芯の強さは、演じているうちに、感じ取れるようになりました。
多香美の行動力の源は、功名心ではないと思うんですね。報道記者として働いている以上は、独占スクープを取りたい。それはプロとしての真面目さから来たもので、褒められるとか社内での表彰とか、彼女には興味がないんじゃないでしょうか。とにかく仕事に一生懸命。先輩の里谷に必死でついて行って、スクープをものにしようと頑張ります。
報道記者としての頑張りが、過去の心の傷や、大きな社会問題につながっていく原作の構成には、本当に引きこまれます。中山先生の思うつぼというか、読者を意外なところへ連れて行ってくれる仕掛けに、見事にはまって……すみません、また熱く語っちゃいました。
中山……いえいえ、嬉しいです。多香美は、報道の仕事を始めて2年目の女性なんですよね。主人公を2年目の女性にしたのは、ちゃんと意味があります。
新木……どんな意味でしょうか? ぜひ、お聞きしたいです。
中山……サラリーマンの1年目は、仕事を覚えることに必死で、あっという間に過ぎます。ところが2年目になると、自分のやりたいことは、何だったの? と、疑問を感じ始めます。その疑問と向き合うことを、周りは許してくれない。やらなくちゃいけない仕事は、山ほどありますからね。で、集中力が下がったりして、トラブルが集中しがちに。実はサラリーマンは2年目が、いちばんストレスで悩む時期なんですよ。みなさん思い返してみてほしい。社会人2年目は、大変じゃなかったですか?
新木……わかります! 私もお仕事をいただき始めて2年目は、いろいろ大変だったかも。
中山……2年目のサラリーマンにトラブルが起きがちなのは、自然なことなんですよ。それでも潰れずに、トラブルを糧にして生き残っていく社会人の女性を、今回の小説ではじっくり描きたい思いがありました。
多香美は、キャリアとしてはまだ新人。だけど、一人前になる初めのステップを踏みだしました。彼女の姿に、成長途上だった若い頃の自分を重ねる人は、けっこういるんじゃないでしょうか。
新木……私の友だちも、仕事で悩んだり、転職しようとしていたのは、まさに2年目でした。2年目って、考える余裕が出てくるんですね。
中山……そう。1年目で覚えたことを、どう活かしていこうか? と。それで多くの人は、うーん……と、困りだす。
新木……「1年きちんと学んだから、もう2年目はできるよね」という感じに放り出されて。それで仕事に懸けられる人はいいですけれど、何ができるんだろう? 本当にやりたい仕事って、これ? と違和感を覚えだすのって、確かに2年目という印象があります。若い社会人のリアルがきちんと反映された作品なんですね。
中山……僕は若者を、全面的に応援しています。しんどくても、頑張ってもらいたい。苦しいだろうけど、多香美のように、逃げないで立ち向かっていれば、解決できなかったトラブルも、きっと打開できます。大きなシステムも、変えられるかもしれない。若者には、それができる力があると信じています。
多香美という役を通して人の本当の強さを表現したい
編集部……『セイレーンの懺悔』のドラマ版は、どのような作品になってほしいですか?
新木……エンターテインメントとしてはもちろん、中山先生がおっしゃったように、私たち若い世代へ新しい風を吹かせられる、そんなドラマになればいいなと。私個人では、仕事で揉まれる多香美を通して、トラブルに遭ったときも柔軟に対応できる、人の本当の強さを示していきたいです。
中山……頼もしいな。ドラマを見るのが、より楽しみになってきました。
新木……ありがとうございます。役者の仕事をしていて、あらためて感じます。
人はひとりでは、生きられません。閉じこもっていたくても、誰かと共存しなくてはいけないから。乗り越えられないトラブルは、人とつながれば解決できるんですよね。
違う意見や考え方を、たくさんインプットして、成長していく大切さを、多香美という役を通して表現できたらと思っています。
中山……僕にとって『セイレーンの懺悔』は、ルーキーに対するエールをこめた作品です。ひと言で言うなら“駆け出し”がテーマ。主役に挑んでいただいた新木さんには、感謝と尊敬の念で、いっぱいです。
新木……感激です。大きな励みになります!
中山……実は『セイレーンの懺悔』は、新作のオファーが来ているんですよ。
新木……え、続きのお話ですか?
中山……はい。間もなくプロットを提出する予定です。
新木……楽しみ! ご執筆は大変だと思いますが、ファンの立場でお待ちしていますね。
中山……次もドラマ化されたら、ぜひ新木さんの主演の続投をお願いしますよ。
新木……光栄です! そのときは私の方こそ、お願いします。
WOWOW「連続ドラマW セイレーンの懺悔」は10月18日(日)スタート(毎週日曜よる10時)。第1話は無料放送です! お楽しみに!
1961年岐阜県生まれ。2010年『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞してデビュー。ほかの著書に『連続殺人鬼カエル男』『贖罪の奏鳴曲』『セイレーンの懺悔』『人面瘡探偵』『ヒポクラテスの試練』『毒島刑事最後の事件』など多数。
1993年東京都生まれ。集英社『non-no』専属モデル。『コード・ブルー THE 3rd SEASON』『トレース〜科捜研の男〜』『モトカレマニア』『SUITS/スーツ2 』ほか、多数のドラマ・映画・CMに出演。第8回「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」新人賞受賞。
10月18日(日)スタート 毎週日曜よる10時から放送 【第1話無料放送】
出演 新木優子 池内博之 高梨臨
甲本雅裕 濱田マリ 池田成志 / 高嶋政伸
著/中山七里
定価本体:800円+税
発売日:2020/8/5
判型/頁:文庫判/384頁
ISBN9784094067958
電子版情報
価格各販売サイトでご確認ください
配信日2020/08/05
形式ePub
書籍の詳しい情報はこちらから
https://www.shogakukan.co.jp/books/09406795