「クズ男」なのにモテる理由。2丁拳銃小堀裕之さんの生き方がスゴすぎる
世の中には、自分の基準では考えられないほど「クズ」な人がいるものです。
今、そんな「クズ」っぷりで世を動揺させているのが、お笑いコンビ2丁拳銃のボケ担当、小堀裕之さん。
テレビ番組「深イイ話」などで「愛人が12人いる」「家にめったに帰らず給料も入れない」などなど、さまざまな「クズ」っぷりを披露し「ヘドロパパ」と命名されたほど。
そんな小堀さんがこのたび『ヘドロパパのヨメイゲン』という単行本を出版! 「日本一のクズ芸人」にお嫁さんが放った名言&迷言集は、読んでいると「逆に元気が出る」と話題です。
そもそもなぜ本を出すことになったの? どうしてそんなクズっぷりを披露しながら離婚に至らない&女性が絶えないの? などなど、気になることを根掘り葉掘り直撃! CanCam.jp独占の内容たっぷりでご紹介します♡
Q.まずはじめに、本を出すことになったきっかけを教えてください。
単純に「本を出したい」という憧れがずっとありまして。「本を出したいです!」と言い続けているうちに、いろいろなタイミングが合って出せることになりました。
打ち合わせを重ねる中で、世間が僕を知っているとするならば、やっぱり僕のヘドロでクズな「ヘドロパパ」絡みだろうな……というわけで、僕のお父さん像・旦那像を書こう、という方向性に行き、今回の嫁の名言・迷言集にまとまりました。
Q.『ヘドロパパのヨメイゲン』はどんな本なのか、改めて教えてください。
僕の中でこの本は「言い訳本」なんですよ(笑)。
「僕そんなクズですか? ヘドロパパって呼ばれてますけど、そんなダメです? こんなに楽しいですよ、そんな悩んでませんよ」ってことがわかる本です。うちの家族のことをテレビで知って「子どもいじめられてるんちゃうの?」とか、かわいそうだと思っている人らには、心配しないで、って見てほしいですね……そんなすごい狭いところを狙ってます(笑)。
ただ、今の世の中、何もかもすごくキレイな空気にしようとしてはるんですけど、案外こんな家族の愛の形があってもいいんじゃないか、という本だとは思います。キレイじゃなくていろんな雑菌があるかもしれないけど、そのほうが案外みんないろんな抗体ができて、元気な子や元気な嫁が育つよ、と。キレイにしすぎる必要はないし、クズならクズでそのまま生きたらええやん、と。
Q.数々のお嫁さんの名言・迷言にはかなり過去のものもありますが、いつかネタに使おうとメモしていたりしたのでしょうか?
うちの嫁は高校生の頃からの付き合いになりますが、当時からずっとおもろいので、前々からいつかネタに使おうとメモっていたものもかなりあります。
嫁さんのすごいところは、数々の発言を別にウケを狙って言ってるわけじゃないし、もちろんお笑いの養成所に通ったこともない。素でおもろい人なんですよね。それこそテレビで僕が語るファンタジー「愛人が12人に増えた」って話を見たときも「すごいなぁ! でもそれはなぁ、誰ひとり好きじゃなくて自分のことが好きなだけや。で、慰謝料として12万ちょうだい」とか(笑)。的を得ているし、12万って安ない!?
Q.(笑)。よくこの「クズ発言」の数々は「ファンタジー」と語られていますが、実際のところどっちなんでしょうか?
リアルファンタジーです。あの、フランス映画のような見方をしていただくくらいがちょうどいいと思います(笑)。
Q.さて、そんな数あるお嫁さんの名言・迷言の中から「まず真っ先にこれを本に載せよう!」と思ったのはどの発言ですか?
本音を言うと……浮気に寛大すぎる発言4連コンボですね。本で言うと22~23ページの「コンパで知り合った子と一晩だけならいい」「同じ子と2年以上会うのやめて」「山手線の内側の人はやめて」そしてもうひとつは……本でご確認ください(笑)。
Q.そこも含め、本当にお嫁さんが浮気について寛大すぎて驚いたのですが、実際これまでどれだけの浮気発覚があったのでしょうか?
修羅場は数えたらキリがないです(笑)。
デビュー当時、嫁さんじゃない別の女の子の家で肺に穴があいて緊急入院してお見舞いに来たその子と嫁さんが病室で鉢合わせしたりとか、バーか何かのレシートが見つかって「誰と行ったん」「後輩と行ったんや」「え、後輩がカシスオレンジ飲むん? カルーアミルク飲むん?」とバレて、証拠隠滅にレシートを食べたりとか(笑)。
不思議なことに、全部バレるんですよ。女の人の勘もあるし、僕のツメが甘いこともあります。
Q.実際「クズだ」とバレているのに、そんなに女性が絶えないのは……いったいどんな理由があるのでしょうか?
うーん……自分ではわからないので、おそらく、なんですけど、きっと人は僕に対して期待をしていないんですよ。「ヘドロ」「クズ男」とか、ハードルがめちゃくちゃ低い状態から入って、僕をナメてくる(笑)。で、僕自身も別に着飾ったり自分をよく見せようとすることもなく、ノーガードで本当に思ったことだけをしゃべる。そのわりには実は聞き上手なところがあって、心地よい時間が過ぎていく。で、気づいたらクセになっている、っていうところじゃないかと(笑)。
僕は漫才師なのでやっぱり「話のリズム」や「場の空気」には敏感だと思います。相槌、リズム、人の話を邪魔せずに聞いて、自分の意見を先に言わないこと。もし言うとしても相手の話を全部聞いてから「そう思うよ、わかるよ」と肯定しながら「でも、こうなんちゃう?」「向こうもこう思ってるんじゃない? そんな風に言うてあげんでもいいんじゃない?」などと言うくらい。もちろん、ときには「そりゃそうや、それは最低や、俺文句言いにいったろか」と言ったり、たぶん、相手にとって心地いい賛同ができるんですよ。
……でも、それは「考えてみれば」やっていることで、あんまり戦略的にやっていることじゃないかもしれません。
Q.正直、これまで離婚の危機になったことはありますか?
僕から別れてほしい、離婚しよう、と思ったことはないです。ただ、もし嫁さんが「離婚しよう」と言ってきたら、即「わかった」と答えます。
かといって、嫁は嫁で、今のところ別れるつもりはないみたいです。たとえば浮気がバレて怒られたときに僕が「じゃあ別れようや」と言うと向こうはひるむ。でも、こう言えるのは「絶対に嫁は別れようと言わない」という自信と甘えがあるからでしょうね。結婚前からそうなんですけど、嫁は人見知りで、他人としゃべることがそんなに得意ではなく、自分に自信がない。だから、一緒にいてラクな僕とは別れない。とはいっても、やっぱり僕が奥さんに甘えている部分もあります。
僕と嫁さんは根本に「私はこの人や、俺はお前や」というのががっちりあるんですよ。あとはどっちが上とか下とかがない、かかあ天下でも亭主関白でもない、対等の関係をずっと保つようにしています。ストレスをためず、ふたりとも言いたいことを言う。
ただ、万が一億が一言ってきたら、本当に離婚しますよ。その緊張感のもとに夫婦をやっているつもりはあります。それはコンビも同じで、もし相方から解散しようと言われたらすると思います。そういう緊張感のもとで、僕はバンドをしたり弾き語りをしたり、好きなことをしています。
Q.自分にそこまで自信を持てるのが単純にスゴい、と思うのですが、どうしたら自信が持てるようになりますか?
結局のところ、うそをつかず、正直に生きていたら、すごくラクなんですよ。
きっと誰だってクズなところは多かれ少なかれある。そこで自分をクズだと認めて「俺はこうやし。だから何。きらいだったらどっか行ってもらっていいですよ。でももし興味があるならしゃべりましょう」って、クズな自分のことを卑下するんじゃなくて、肯定したら、こんなにラクなことはないです。自分をよく見せたりもしないし、思ってもないことはしゃべらない。
さらに、相手が自分に求めるハードルが下がるから、ちょっといいことしただけでいいやつって思われたりモテたりする。僕みたいなのと一緒にいると、相手も着飾る必要がないから、相手もラクになる。
あとは、僕は表舞台で人前に立つ人間なんですけど、そういう人は、自分に自信がない状態では人の前に立ったらアカンと思うんですね。だからどう自信をつけるかっていうことがすごく重要。そうやって自信満々であるために、自信満々に自分を肯定し続けて素直に生活していたらクズになりました(笑)。
Q.とは言っても、他の人の目が気になることはないですか?
嫁さんと出会ってこの人と結婚する、と思ったから、もうあとはええやろ、と安心するような気持ちはあったと思います。嫁さんという安全な浮輪を持っているから、遠いところまで泳いでいけるようなイメージです。
Q.そこまで、お嫁さんと「この人と結婚するだろう」と思った理由はどんなところにありますか?
そうですね、付き合った当初から結婚するだろう、と思っていたのは、それはもうフィーリングだと思います。素直なおもろい人で、一緒にいてラク。そして「勝てない」と思った部分がある。最初は親友から始まって付き合った、ということもあって「ずっと一緒におれるな」というところですかね。一緒におってしんどい時間もないし、もし黙ったとしても「次なんかしゃべらな」と気をつかうことも、出会ったときからお互いにまったくない。そういうところだと思います。
Q.そんなお嫁さんと結婚して、4人のお子さんがいて家庭があって。小堀さんが「クズ」な一方で、お子さんたちの座談会ページを見るとものすごくしっかりしていらっしゃるんですが、子育てでこんなことを心がけている、ということはありますか?
僕はひとりっこなんですけど、両親もお互いに浮気しているようなクズやったんですよ。おかんは2軒となりのたばこ屋のおっさんと浮気してて、おとんは斜め向かいの同級生のけんちゃんのおかんと浮気してた(笑)。それを知ってて「僕はこんな親になったらあかん」と反面教師として育った結果……こんなに立派に育ったんですけど(笑)、でも、逆に今は「僕は子どもたちにとって、教師ではなく、反面教師であろう」と思っているんです。自分自身が「親は反面教師」だったぶん「親に甘えて信用するとロクなことないぞ、そんな風に親を頼るな。親の金をアテにするな」と。そのぶんしっかり育っていってます。
Q.とはいえ「いい父親であろう」と思ってやっていることなどはありますか?
長男とは徐々に話が合いだしたんで、今すごく楽しくやっています。長男がテニスを始めたんですが、僕が高校時代軟式テニスをやっていたのでちょっとは教えられるんですよ。長男は僕がただのクズじゃない、ただもんじゃない、と思っているみたいで「この人、言うことは合ってる」と感じてくれているみたいです。試合があるときは保護者席で一生懸命応援しています。たまに声を出しすぎて注意されることもあるくらい(笑)。
技術面で教えられることよりも、根性論が長男には響いているみたいです。「気持ちで負けるな」ということや、一生懸命応援してくれる人がいること。それが伝わっている気がします。
Q.それでは最後に、この本のおすすめポイントを教えてください。
「彼氏がクズや……」という方や、家族で悩んでいる人が読んでくれたら「うちのほうがここよりマシや!」と、笑えるかもしれません(笑)。でも、次第に相手のイヤなところや弱点を許せたり愛せるようになると、すごくラクですよ。そういう「相手に期待しない」「勝手に人のハードルを上げない」ということは学べるかもしれません。
彼氏や家族じゃなくても、自分がダメなんじゃないか、クズなんじゃないか、と思ったときに読んでもらえたら「下には下がいる!」と、そんな風にラクになってもらえると本望です。
あと、ひとつこれは言いたいんですが、この本の最初に家族写真のページがあるんですよ。これはたぶん、本を読み始めたときと、最後まで読んでから見たときでは見え方が違うはずです。そうなるとこの本は成功です。そんなポイントも楽しんでもらえたら嬉しいですね。
この本を読んでいると、人間関係にまつわる悩みや「自分に自信が持てない」といった悩みを「なんで悩んでたんだろう!」と笑い飛ばしたくなります。考えすぎずに、笑って楽しく生きていればそれでOK。構えずに気軽に笑って読める本なので、書店で見かけたら是非お手に取ってみてくださいね。(後藤香織)
『ヘドロパパのヨメイゲン』
2丁拳銃 小堀裕之 著
1,000円+税/小学館
1974年生まれ、奈良県出身。1993年6月に相方の川谷修士と「2丁拳銃」を結成。1994年に爆笑BOOING第7代グランドチャンピオン、1998年にはNHK新人演芸大賞(演芸部門)を受賞するなど、数々の賞を受賞。100分間ノンストップ漫才を行う「百式」を毎年開催するなど、漫才コンビとして活動する傍ら、落語や弾き語り、お芝居など多方面で活躍。小堀個人「ヘドロットン」としても活動の幅を広げている。
Twitter:@hagurehedoro
Instagram:@hedorotten