多くのファンに惜しまれながら3月に急逝したイラストレーターで作家の安西水丸さんの追悼本『水丸劇場』が6月27日、緊急出版されました。
「安西水丸」。その名を意識していなくとも、その飄々とした独特なタッチのイラストは誰もが一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。日本で最も有名な作家と言っても過言ではない作家・村上春樹さんとの名コンビは有名で、「ふたりにしか出せないゆるい雰囲気がたまらない」と多くの人に愛されていました。
『水丸劇場』は、単行本未収録の作品を多数掲載。雑誌『クリネタ』に連載された絵、エッセー、掌編小説、雑誌『家庭画報』2013年新年号の特別付録として発表された「いろはかるた」が収録されています。
さらに、生前親交のあった著名人たち(和田誠さん、大橋歩さん、南伸坊さんなど、とにかく超豪華!)が語る水丸さんのエピソード「安西水丸さんのこと」や、座談会を収録した「追悼 水丸カレー部座談会」、「鼎談 水丸さんの眼鏡」からは、生涯を通して己の信念を持ち続けながらも、独自の美学とセンスでさらりと粋に振る舞い、多くの人に愛された「水丸流の生き方」の魅力が存分にうかがえます。
「ぼくは絵は上手い下手で評価してはいけないという考え方を持っている。
ゆがんだ形にも、濁った色にも、それだから魅力があるといえるのではないか。」(本文より)
安西さんが語る言葉は確かにまったりと柔らかく、しかし確固とした意志を感じます。この言葉には、「絵」だけではなく「人間」に対してもきっと安西さんは同じようなことを感じていたのではないか……と思わず考えさせられてしまいます。
まさに、時を経ても色褪せない「水丸ワールド」が堪能できる1冊です。是非、お手に取って見てみてくださいね。(後藤香織)
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