■ALに、15歳の頃の曲を収録。昔の曲を復活させたのは「新たな挑戦」
Woman Insight編集部(以下、WI) 今回のテーマは「時間を忘れるほど没頭してしまうこと」です。ひとつ挙げるとしたら何ですか?
ニコラス・エドワーズさん(以下、ニコラス) 僕、すごく面白くない人間なんですよ(笑)……だから普通に答えてもいいですか? 時間を忘れて没頭してしまうことは「曲作り」です。恵まれていることに、趣味が仕事になっているような状態なんです。曲作りや編曲をしていると、気がついたら朝の5時になっていた!なんてことはしょっちゅうです。
WI それは曲作りに締め切りがあるなし関係なく?
ニコラス 関係なく、です。締め切りがあるときは、むしろ気持ちが曲作りに向かえなかったりすることもあります(笑)。直感で出てくるものに向かいたいタイプというか、締切直前にパッと出てきたものがよかったこともありますけど、締め切りがないのにひたすら曲作りをして、朝まで鍵盤やギターやパソコンの前で時間だけが過ぎていく感じが好き。それに僕は時間が過ぎている感覚は全くなくて、夜、カーテンを閉め忘れるのですが、没頭していて窓の外から朝日が昇ってきている……ということは割とよくあるんです。でもそんなふうに没頭できるのは「音楽」だけ。朝までやれるのは仕事だと思っていないからかもしれないです。いまはそれが僕の仕事なんですけどね。
WI 趣味を仕事にするのは、いいこともありますが大変なこともありますよね。
ニコラス はい。この仕事をしていて嫌なことはまったくないですが、僕がやりたいことは、曲を作ってステージの上に立ち、それを届けること。あるいは、インタビューなどを通してリスナーのみなさんに想いを届けることで、それが楽しかったり嬉しかったりするのですが、そこにいくまで、プランニングも含めて時間がかかりますよね。2時間ちょっとのステージのために、何週間も準備が必要で。僕は、好きなことを仕事にしているので、そういうことも全部含めて幸せな時間だと思っているので、大変だと思っていないです。
WI すべてはステージのため、シングルなりアルバムの一枚のために?
ニコラス 僕自身、高校のときに日本語の勉強をどうしてもしたくてしたくて仕方がなかった、あの頃と同じ感覚なんです。当時、大好きな日本語の勉強を存分にするために、数学や科学の苦手な科目を早くやり終えなくちゃ!と思いながら勉強していました。どんな仕事も、いちばん楽しい部分にたどり着くまでに、きっと楽しくない部分も少しはあると思うんですけど、俯瞰で見てみると、すべてが楽しいこと、ステージに立つまでの時間につながっていると考えれば、どんなこともドキドキワクワクすることになるんですよね。そう思っている自分に最近気がついたんです。
WI ニコラスさんの曲作りは、曲が先行ですか?
ニコラス 僕は、メロディを作るときに一緒に出てきたワードを尊重するようにしています。メロディと言葉は深く関連しているというか……もちろんパッと出てきた言葉が歌として成立しないので、そのあと修正して作品として完成形に近づけていくことはありますが、メロディを作っていた時点で出てきた言葉のテーマはなるべく変えないようにはします。メロディも言葉も、そのときに出てきたものを大切にしているので、これまで“ボツ”になった曲を復活させたことは一度もないんです(笑)。
WI そのときの気持ちをいちばん大事に考えて作っているんですね。
ニコラス 性格的に、その瞬間に制作していた自分に戻れないんです。だけど、10月アメリカに帰ったとき、ママから僕が15歳の頃に作ったデモテープを渡されて……聴いたら日本語も歌もすごく下手だったんですけど、「曲はいいかも」と思って、その一曲を今回のアルバムにも収録しました。この話、プロデューサーには話していないんですけど、提案した曲の中から選んでくださったので結果的にOKってことで(笑)。
WI プロデューサーの方が選んだのはたまたま?
ニコラス そうなんです。僕にとって昔の曲を復活させるのが新たな挑戦だし、そもそもその曲を作った15歳のときは、こんなふうにアルバムを作ることなんか考えていなかった。でも、アメリカに残されていた一曲、ただ純粋に音楽が好きなひとりの少年が作ったその曲を聴いて「可愛い曲だな」と思ったのと、いまはもう書けない曲だと感じる部分があって。“新しく二人暮らしを始めます~キッチンの床に寝転がったまま、段ボールが周りにいっぱいある中で、将来の子供にどんな名前つけたい~”みたいな、そういう歌詞(笑)。激しい妄想の歌詞、いまじゃもう絶対に書けない!って(笑)。だからジェフさんには、何も言わず曲だけを提案したんですけど、それを選んでもらえて、僕は「曲作りに没頭してきてよかった!」と。没頭しすぎて寝不足なのは、ちょっとだけ大変ですけどね(笑)。