WI その王道をどう変えていきたいですか?
守屋 私自身、『Oggi』の王道のスタンスを変えるつもりはありません。王道の雑誌をどう作っていくかということにやりがいがあるし、それで読者の方から信頼感を得てきた雑誌だと思っているので。恐らく、あの表紙を見て「『Oggi』が変わった」と思う方もいるかもしれませんが、それは、見る方向というか、観察の仕方が変わっただけで、やってることを変えてるつもりはないんですよ。実際、モデルが突飛な格好をしているわけではないですし、Oggi読者が好きであろうファッションに身を包み、街を颯爽と歩く様子を、ライブ感があるように写したらあのようになるんじゃないか……というだけ。『Oggi』のいいところは残す。通勤に向けてのファッション誌、シンプルでベーシックな人に向けたファッションというのも変えない。
WI では『Oggi』が築いてきた王道に、守屋編集長として何かつけ足すとしたら?
守屋 たとえば、毎日働いている中でも、いろいろあるわけじゃないですか。失敗して、立ち上がれないほど落ち込むことや、失恋もあるかもしれない。たまには酔っぱらってメイクも落とさず寝てしまう……そんな日もあると思うんです。だから、生きていればいろいろあるけど、基本は“王道”。でもすべてをきれい事にしたくない。だって「王道=キレイごと」じゃないはずだから。アラサーにもなれば、いろいろある。そんなことも受け入れつつ、前向きさも保って生きていかなくちゃいけない。時に笑い飛ばして、真剣に悩んで……という人間らしさの肉付けが足されるようになるのかなって。
WI 守屋編集長がOggi世代のときは、ちょうど『Oggi』に在籍していらっしゃったのですよね。その当時は、どんな時代ですか?
守屋 当時、働く女性に向けた雑誌がなかった。『Oggi』は、ハイブリッドなOLに向けた雑誌だったので、トレードマークになっているあの白い表紙も、実は緻密に計算されて作られたものなんです。全体的に男性っぽく、洗練されたデザインが、他の女性誌にないと話題になっていました。載せているファッションも、「かっこいい」というのが褒め言葉になるような辛口のものが多く、それで他と差別化してましたね。
WI その当時のOggi読者あるいはOggi世代が、いまと大きく変わったことはどこですか?
守屋 当時はまったくそんなふうに思っていなかったけど、実はいまの人たちのほうが、肩に力が入っていないのかなって。ファッションや人生の選択肢が増えて困っている反面、それに対応していける柔軟性も持ち合わせているような気がします。そして、よりよい選択肢ができるように考えているというのに近いかな。オーバーだけど「明日会社がなくなっても生きていける自分でありたい」と思っているというか、常に次の一手を考えているのを感じます。そこに強ささえ感じるし、貪欲だなって。
WI 現代のOggi世代からいちばん感じることはどんなことですか?
守屋 『Oggi』の誌面作りで欠かせない読者モデルの“Oggiブレーン”には、会社帰りに編集部へ来てもらうことが多いのですが、みんなパンツスタイルで現れるんです。パンツをはきたい世代なのかもしれませんが、やはりパンツを履いて社会で働いてるんだなって。でも、パンツスタイルでシャキシャキ働いているはずなのに、近寄りがたい印象は一切ない。そこが昔と違うかも。昔は、社会に出て男性と対等に働くための手段のひとつとしてパンツを履いたり、それで肩に異常に力が入っていたような気がします。いまの人たちは、やわらかさもあるけど、シュッとした雰囲気ももちあわせている。そんな女性像が提案できるファッション誌を目指したいですね。
「『王道=キレイごと』じゃない」という言葉に、ハッとさせられました。物事を正面からみるか、斜めから見るか。その、視点を変えただけ。これからどんどん『Oggi』の王道が、守屋さんの視点によって、いろいろなカタチで表現されていくのだろうと思いました。次回は最終回。守屋編集長が考える、働く現代女性にとっての「仕事と結婚」について聞いてみました。(さとうのりこ)
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