しんのすけ@今月のMOVIEコレミトコ!
TikTokの映画レビューでバズりまくりのアニキ・しんのすけさんが読者にイチオシの映画をナビ☆
紹介してくれたのは…
しんのすけ
1988年、京都府生まれ。映画感想TikTokクリエイター。映像作家、株式会社MEW Creators代表。映画レビュージャンルを開拓し人気を集める。
Q. 〝飯テロ〟だと思う映画は?
A. 『千と千尋の神隠し』とディズニーアニメ『ふしぎの国のアリス』。アリスは、セイウチがヤングオイスターを食べようとするシーンが好き。
今月の映画は『うるわしの宵の月』
STORY
大人気の同名漫画を実写映画化。女子高校生の滝口 宵(安斉星来)は、容姿端麗でスマートが故に〝王子〟と呼ばれていたが、内心ではそんな完璧な王子像に複雑な思いを抱いていた。ある日、学校一のイケメンで同じく〝王子〟と呼ばれている市村琥珀(道枝駿佑)と出会い、「美しい」と言われて強引なアプローチを受ける――。
自分のことって、自分がいちばんわからないよね
最高。素晴らしいを超えて、青春恋愛映画としてパーフェクト! 何よりすごいのが、学校中から〝王子〟と呼ばれる男女が恋に落ちるという、少女漫画だからこそ成立する設定を、道枝駿佑さんと安斉星来さんが圧倒的な説得力でねじ伏せていること。少女漫画の実写化において、キャスティングは作品の世界を信じられるかどうかを決める最初の関門です。その点、今作は文句なし。ふたりが並んだ瞬間、「W王子」という言葉にまったく違和感がない。これだけでも奇跡的なのですが、今作ではこの〝美しさ〟こそが、恋愛だけではない物語の核心へとつながっていくのです。
今作で重要なのは、琥珀と宵が〝美しく、完璧に見える人〟だからこそ抱えている不自由さ。宵は女子から「王子」と憧れられながら、過去に男子から見た目を揶揄された経験を引きずり、男性と話すことが苦手。それでも周囲が求める〝王子〟に慣れ、いつしか自分でもそう振る舞うようになっていく。一方、イケメンでお金持ち、恋愛経験もある琥珀も、実は自分の弱さを見せることには慣れていません。
恋愛経験でいえば、琥珀と宵は正反対。なのに、ふたりとも本当の意味で誰かを好きになることには不器用。好きな人の前では、嫉妬したり不安になったり、格好悪いことを言ってしまったりする。つまり恋愛って、誰かを知っていくと同時に、自分でも見たくなかった自分を知ってしまうことなのかもしれません。周囲から〝王子〟と呼ばれ、完璧に見られてきたふたりだから、なおさらそれは恥ずかしくて怖い。でも、そんな弱さを少しずつ相手に見せられるようになることで、ふたりの恋は進んでいきます。キラキラしたビジュアルにときめく映画なのに、その中心にあるのは「好きな人の前で、格好悪い自分になれるか」というとても普遍的な恋愛。だからこそ、こんなにもキュンとするのだと思います。
そして、この奇跡的なふたりを最高の状態でスクリーンに収めたのが、『交換ウソ日記』の竹村謙太郎監督。冒頭から徹底してふたりを美しく撮り、光や構図、編集まで心情に寄り添って変化する。恋心が大きく動く瞬間には大胆な演出も飛び出して、これぞ青春恋愛映画! と本気でぶん殴られました。まず、観客にもふたりを「王子だ」と信じ込ませて、そこから美しさの奥にある〝弱さ〟を見せていく。キャスティングの奇跡を映画の説得力に変えた演出にも拍手です。
最後に、下北沢に住んでいた僕からひとつ。宵の実家のカレー屋として登場するのは、実在する『茄子おやじ』という店。僕も何度も足を運んでいる大好きなお店です。映画を観たあとは、ぜひ聖地巡礼してカレーまで味わってほしい! W王子にときめき、恋するふたりにキュンとして、最後は下北沢でカレーを食べる。恋愛キラキラ映画ウォッチャーの僕として、全力で推したい1本。最高、とさせていただきます。
構成/田中絵理子 WEB構成/久保 葵




