「この映画を観ていると、自分の人生まで少し愛おしく思えてくる」TikTokでバズりまくりのアニキが『さとこはいつも』の見どころを解説!

しんのすけ@今月のMOVIEコレミトコ!

TikTokの映画レビューでバズりまくりのアニキ・しんのすけさんが読者にイチオシの映画をナビ☆

紹介してくれたのは…

しんのすけ

1988年、京都府生まれ。映画感想TikTokクリエイター。映像作家、株式会社MEW Creators代表。映画レビュージャンルを開拓し人気を集める。

Q. 映画の登場人物になれるとしたら?

A. 恐竜に会いたいので『ジュラシック・ワールド』の登場人物がいいですね! 恐竜に追いかけられる役でもいいです。


今月の映画は『さとこはいつも』

STORY

仕事も恋愛もスランプ気味な、映画配給会社に勤める西田沙都子(有村架純)35歳と、子育てが一段落し自分の時間ができた55歳の飯島里子(石田ひかり)。そして、初恋をして妄想が止まらない15歳の中井聡子(姫野花春)。世代も育った環境も違う3人の〝さとこ〟が、ひょんなことから自らの人生を〝自分の物語〟としてそれぞれ書き始めたことで、3人の日常が少しずつ交差していく。


人生は「誰かのひと言」で動き出す

新しいことを始めたい。けれど、きっかけがない。そんなふうに立ち止まってしまうことはありませんか。『さとこはいつも』に登場するのは、15歳、35歳、55歳という、まったく違う人生を歩む3人の「さとこ」。初恋、不倫、子育て。それぞれの出来事をきっかけに文章を書き始める彼女たちを見ていると、この映画は「書くこと」についての映画ではなく、自分の人生をもう一度「読み直す」映画なのだと気づかされます。

面白いのは、3人とも誰かとの出会いが人生を少しだけ動かしていることです。15歳の聡子は国語の先生から「書いてみなさい」と背中を押され、自分の言葉を綴る喜びを知ります。35歳の沙都子は、不倫という間違った恋の終わりを、自分の人生を書くきっかけに変えていく。そして55歳の里子は、子育てが一段落した今だからこそ、夫や息子たちに背中を押され、しまい込んでいた夢をもう一度手に取ります。いい出会いも、苦い経験も、人は誰かとの関わりによって人生が少しずつ動いていく。その眼差しは、沖田修一監督作品らしい優しさに満ちています。

沖田監督の映画には、〝人生を変えるヒーロー〟は登場しません。監督の過去作である『横道世之介』も『さかなのこ』でも、登場人物は劇的に変わるわけではありません。でも、まわりの人との時間が積み重なることで、自分の人生の見え方だけが、少し変わっていく。『さとこはいつも』も同じです。文章を書くことは、未来を変える魔法ではありません。過去に起きた出来事を振り返って並べ直し、「あの時間にも意味があった」と気づくための行為なのです。だから、この映画を観ていると、自分の人生まで少し愛おしく思えてきます。

思えば僕も高校生の頃、映画が好きだと話していると、それを知った現代文の先生が「京都東映撮影所の見学ツアーがあるけど行く?」と声をかけてくれました。当時は純粋に面白そうだと思って参加しただけでしたが、5年後、その撮影所が自分の職場になるなんて想像もしていませんでした。先生、本当にありがとう! …なのですが『さとこはいつも』は、そんな〝人生を変えてくれた人〟への感謝を描く映画ではありません。人生は、自分で変えたと思っていても、振り返ると誰かの何気ないひと言や行動から始まっている。その事実を、思い出させてくれるのです。

新しいことを始めるきっかけは、案外すぐそばに転がっています。でも忙しさを理由に後回しにして、「あのとき始めていれば」と後悔してしまう。そんな経験は誰にでもあるはずです。だからこそ、この映画が教えてくれる「今だから書ける」「今だから始められる」というメッセージが胸に残りました。人生は書き直せません。でも、自分の人生を読み直すことはできます。その最初の一歩は、特別な才能でも大きな決断でもなく、まずこの映画を観ることから始めてみてはいかがでしょうか。

『さとこはいつも』

配給:ハピネットファントム・スタジオ/9月18日公開
©2026 「さとこはいつも」製作委員会
CanCam2026年10月号「CCC!」より
構成/田中絵理子 WEB構成/久保 葵