「腸活」って結局何ですか?管理栄養士に聞いた、まずやるべき腸活はコレ!

ここ数年、とてもよく耳にするようになった言葉、「腸活」。
「なんとなく健康に良さそう、お通じが良くなりそう」「ヨーグルトや納豆など、発酵食品をいっぱい食べる」など、ざっくりとしたイメージはありますが、改めて「結局どう体にいいの?」「何から始めたらいいの?」と聞かれると、答えられない人も多いのではないのでしょうか?

そこで、改めて知っておきたい「腸活」について、アスリートの腸内細菌データを世界トップクラスで保有し、腸内細菌の研究をベースに科学的に追求した腸ケア商品やサービスを開発・販売するAuB株式会社の管理栄養士、清水瑠美さんにうかがいました。

Q.そもそも「腸活」って何?

A.体の土台を整える行動です

最近あらゆるところでよく聞くようになった言葉ではありますが、実は30年ほど前から言われてきたもの。
よく、「腸活」はお通じを良くすることが目的とされがちですが、それよりもっと広く「体の土台を整えるための行動」と認識しましょう。腸内細菌は、免疫力や栄養の吸収など、体の根本に影響を与えるため、腸が整っていない状態で他の健康改善に取り組んでも、あまり効果が出ないことも…。

意識的に腸活を行うと、まず1週間程度でお通じに変化が出始めます。そこからだいたい3か月ほどで、次第に「そういえば最近、風邪を引きにくい」「太りにくくなった気がする」などの体の変化を感じるようになるはずです。すぐに体そのものが変化するわけではなく、ある程度時間が必要なため、コツコツと毎日できることを積み重ねていきましょう。

 

Q.「腸活」って何をしたらいいの?

A.「菌を摂る→育てる→守る」の3STEPをコツコツと

大きく分けて「発酵食品やサプリなどで菌を摂る」「摂った菌に食物繊維などのエサをあげて育てる」「育てた菌を守る」こと。できる範囲で毎日コツコツ取り組んでいきましょう。

STEP1.発酵食品を食べて、菌を体に取り入れて

まずは菌を体の中に入れるところからスタート。ヨーグルト、キムチ、納豆、味噌、塩麹など「発酵食品」を意識的に摂ることから始めましょう。

腸内細菌で何よりも大切なのは「バランスをとる」ことです。理想的な腸内環境とは「ある1種類の菌をたくさん蓄えた状態」ではなく「多様性があり、いろんな菌がいる」状態。さまざまな菌がいることで、お互いに助け合って働いてくれます。
そのため、発酵食品は「これを食べておけばOK!」というわけではなく、可能な範囲で構わないので、多くの食材をいただくことが重要。ヨーグルトも、メーカーによって使われている菌が少しずつ違うので、気に入ったヨーグルトを1種類食べ続けるよりも、何種類かをローテーションするほうがおすすめです。

「ヨーグルト製品は、ものによっては糖質量が多い」「キムチ・ぬか漬けなどは塩分が高め」など、栄養バランス面で気になることがある場合や、食事の調整がしにくい旅行・出張先などでは、整腸剤やサプリなどの力も借りると、整えやすくなります。

STEP2.摂った菌を育てましょう

外から摂れる菌は、思ったより多くありません。そのため、お腹にいる菌を育て、働きやすい環境にすることも大事です。菌がエサにするのはオリゴ糖や水溶性食物繊維。菌によって芋類・豆類・海藻など、相性のいいエサが異なるので、こちらもできるだけ多くの食品を摂るとより効果はアップします。

\おすすめの組み合わせ/
・ヨーグルト×バナナ
・キムチ×納豆
・お味噌汁×余り野菜など、たくさんの具材

これらは「菌を摂る」と「育てる」をどちらもできる上に、簡単に食卓に並べられるので、迷ったらこちらを。
腸活はできるだけ毎日継続することが重要なので「いかに簡単にたくさん取り入れるか」がキー! 難しく考えすぎず、できるところから始めましょう。

STEP3.育てた菌を守りましょう

食事、温度、運動、ストレスなど、あらゆることが腸内環境に影響を与えます。特にこんなことに気をつけてみてください。

・お腹周りを冷やさない

菌が活発に働く温度は37度前後。体を冷やすと菌が働きにくくなってしまうため、季節に関わらずできるだけ冷たい飲み物を避ける、湯船に浸かって体をあたためる、寝るときは腹巻きをするなど、「あたためる」ことを意識して。

・口内を清潔に保つ

虫歯菌や歯周病は、口の中だけでなく、一部は腸まで届いていい菌に悪さをしてしまう可能性があります。それを防ぐ意味でも、雑菌が口内にいる食後の歯磨きは大切です。また、朝起きた直後は、水を飲む前に口をゆすぐ・軽く歯みがきをする・マウスウォッシュをするなどを心がけて。

・ストレスをためない

目に見えて数値にするのが難しい「ストレス」ですが、緊張やストレス、疲れは腸に負担を与えます。緊張する仕事の日、胃腸が不調になった経験がある方も多いはず。リラックスする時間を作ったり、ストレス解消手段をいくつか持ったりと、自分なりの対処法を知っておきましょう。

Q.何から腸活を始めたらいいかわからない…そんなときどうする?

A.「今できていないこと」をひとつ始めるだけでOK!特に朝ごはんを調整して

1.「今できていないこと」をひとつプラス

先程の3STEPの中で、できていないことを上から順に始めましょう。
まず、「菌を摂る発酵食品をほとんど食べられていない」なら、そこからスタート。
「なんとなく発酵食品を食べているけれど食物繊維を摂れていない」なら、何かしら追加。野菜、果物、海藻、大豆など、足りていないものをプラスしましょう。
水溶性食物繊維は菌のエサになるだけでなく、糖の吸収を緩やかにしてくれる効果もあるので、ダイエットにも◎。

2.「朝ごはん」を腸活ごはんにする

昼や夜は仕事の関係で食事がコントロールしにくい方も、「朝」は比較的食事の調整がしやすいはず。
たとえば「雑穀ごはん、野菜たっぷり味噌汁、納豆、キムチ」などは、発酵食品も食物繊維もたっぷり摂れるおすすめの組み合わせ。「朝から野菜の味噌汁を作る時間はない…」という場合は、乾物のわかめや海苔など海藻類を入れた味噌汁でもokです。

特に朝は積極的に食物繊維を食べておくと、その後の食事でも血糖値が上がりにくくなり、ダイエットにも効果大。「糖質・タンパク質・食物繊維」の3点セットを摂ることで、バランスよくエネルギー補給ができとなり、代謝を下げずに済みます。
食物繊維は、1食で8g前後くらい摂るのが目標。サラダや汁物、小鉢などで、手のひらにのるくらいの野菜を目安にしましょう。その他、お米を雑穀米やもち麦、オートミールに替えるだけでも、食物繊維量を増やすことができます。

Q.腸活で意外と見落としがちな注意事項はある?

A.タンパク質の摂りすぎ、風邪、過度なダイエットに気をつけて

1.「タンパク質の摂りすぎ」に要注意

体づくりに大事なタンパク質。もちろん不足しないように摂るのは重要ですが、摂りすぎは実は腸に負担を与えます。体重1kgあたり2gが上限です(体重50kgの場合、1日100gまで)。毎日3食、主食&主菜を何かしら食べている方の場合は、思っているよりしっかり摂れているので、プロテインなどで補ってあげる必要がないパターンもあります。
今、便が硫黄のようなにおいがする場合は、タンパク質の摂りすぎの可能性があります。
たんぱく質単体で摂りすぎてしまうと、腸内環境を乱してしまう可能性もあるため、タンパク質を摂る際は、一緒にサラダや具沢山の汁物をつけて、食物繊維を補うことを意識しましょう。

2.風邪を引いた後は集中的に腸活に取り組んで

風邪のとき、病院で処方される「抗生物質」は、体に悪さをする菌をやっつけてくれますが、同時にいい菌にまで悪影響を与えるため、一気に腸内環境が変化します。医師から処方されたら飲み切る必要がありますが、抗生物質を飲んだ後は「菌を摂る・育てる・守る」の3STEPを意識して腸のケアを集中的に行いましょう。

3.ダイエットで食事を抜くのは腸活にも危険

過激なダイエットなどで食事を抜くと、腸内細菌のエサがなくなるため、一部腸壁をエサとして摂る「リーキーガット」という現象が起きます。これが免疫力低下や体調を崩すことにつながるので、要注意。
また「デブ菌」「ヤセ菌」という言葉を耳にすることがあります。確かに血糖値やエネルギー吸収に関わる菌など、体型に直結しやすい菌はいるにはいます。ただ「特定の菌がいること=ダイエットにいい」ではありません。何より重要なのはバランス。たくさんの食材を取り入れることが、何よりの腸活です!

Column:食事抜きダイエットは、長期的には逆効果になりがちです
食事を抜くと、糖質は水分を抱え込む性質があるためその水分が減り、目に見えて体重が減りやすいですが、体脂肪が減って体重が落ちたわけではありません。立ちくらみなどを引き起こすので要注意。最近話題の「16時間断食」も、体が省エネモードになる上、筋肉量が減りやすくなるので、長期的に見ると太りやすいです。「食べすぎたので胃腸を休めたい」など、スポット的に行うのは構いませんが、長期的にはおすすめしません。

これからやってくる師走の忙しい時期。人との外食や多忙での食生活の乱れなどが起きやすい季節ですが、食べるものを少し意識するだけでも、積み重ねれば大きな変化になるはず。「ひとつできないからもう何もしなくていいや」と自暴自棄になるのではなく、「今できることを、何かひとつ」意識して、体を整えてみて!

お話をうかがったのは…
AuB株式会社
管理栄養士・公認スポーツ栄養士
清水瑠美さん

アスリートの腸内細菌データを世界トップクラスで保有し、腸内細菌の研究をベースに科学的に追求した腸ケア商品やサービスを開発・販売するAuB株式会社にて、一般の方からアスリートすべての人を対象とし、”食”の観点から、日々の悩みや課題のヒアリング・提案など、幅広くサポートを行う。
構成/後藤香織