橋本淳が舞台中心となるきっかけは、朝ドラの共演者。「年間100本観劇」をノルマに

TVや映画、舞台と幅広く活躍中の俳優、橋本淳(はしもと あつし)さん。

芸能界デビューして約12年。淡々と着々と芸能活動を積み重ね、気づけば“舞台人”として名の知れた存在に。

これまでを振り返り、「キラキラ系からギラギラ系に変わり、いまは暗い人間(笑)」と笑った後、続けて「そんな中でいろんな人に出会い、たくさん感謝しています」と、優しい口調で言葉を添えていました。

“橋本淳”という人をすべて知るには短すぎるインタビューですが、舞台にのめり込んでいったきっかけ、そして彼のプライベートにも触れてみました。

前半はコチラ→ 舞台人・橋本淳。プライドが高く繊細で弱い“少年俳優”を通して感じたこと

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┃“勉強した証”を書き込んだ台本を見た先輩からの言葉

Woman Insight編集部(以下、WI) この数年は特に舞台中心のお仕事が多いようですが、ひとつの舞台が終わるとまたすぐに次の舞台……という状態で気持ちはすぐに切り替えられるものですか?

橋本淳さん(以下、橋本) できないタイプです。しかも、舞台の本番中から次に控えている舞台の準備をし始めるので、バランスや割合のとり方が難しいんです。たとえば、いま『クレシダ』をやっていますが、公演が落ち着いてきた頃に、次の舞台『キネマと恋人』の準備を徐々に始めて濃くしていき、本番で100になるように調整しています。もちろん現場では次の舞台の台本や資料を開いたりすることはないので、家に帰った後や休演日に次の舞台の台本を読んだり、資料の映画を観たりするんです。パツッとすぐに切り替えられる起用なタイプではないので、公演中の舞台から次の舞台に向けてグラデーションのように現場を組み替えてシフトしていくという感じ。僕はひとつの役に準備をすごくかけるほうで、必然的にこのやり方になっていきました。

 

WI 切り替えが難しいときはありませんか?

橋本 大変な場合と、リフレッシュになっていい場合があります。前回の『月・こうこう,風・そうそう』と今回の『クレシダ』のように、作品のテイストや国の設定、演出の仕方が全く違う場合はいいのですが、『月・こうこう,風・そうそう』とその前の『魔術』のときがなぜか相性が悪くて……。公演が終わってからじゃないと気持ちが入らなくて、『月・こうこう,風・そうそう』の準備がすごく遅くなってしまったんです。いまになって思うのは、作品の不条理っぽさが似ていたからかな、と。

 

WI ツイッターを拝見したのですが、すごく資料を集めたりと準備をされる方なんだなという印象でした。

橋本 スタートはそうですね。でもただの自己満足です(笑)。勉強をしたほうがいい作品もありますが、舞台はひとりでやるものではないので、「この時代にこんなものは存在しないのに」とかこだわり始めると、実際に現場に入ったときに重荷になったり足かせになることもあるんです。勉強をすることはしますが、初日に全部捨てるし、絶対に自分で得た知識をひけらかしたりはしない。きちんと自分の血と肉にして、現場でどう対応できるかに重きを置いています。実は昔、現場で「勉強してます」アピールをしていた時代があって、そのときは台本にもたくさん書き込んでました(笑)。いつだったか、それを見た先輩から「こんなの要らないよ。台本は真っ白なほうがいい」と言われて気づいて、それからは台本に書き込んだり、勉強してますアピールはしなくなりましたね(笑)。

 

┃朝ドラ共演者のアドバイスで「年間100本」をノルマに

WI ここまで舞台中心の仕事になるきっかけみたいなものがあったりしたのですか?

橋本 20~21歳のころ、朝ドラ(『連続テレビ小説 ちりとてちん』)に出させていただいたのですが、共演者の方に舞台役者さんが多く、「淳は舞台は観るのか」と聞かれたことがありました。当時2回ほど出演していましたが、それ以外で観たことがなかったのですが、「やりたいなら、いろいろ観たほうがいい」と言われて。当時ご一緒した松重豊さんやナイロン100℃の松永玲子さん、キムラ緑子さんたちの舞台に行くだけで、年間が埋まるような状態。そこで、演出家さんや作品のことを勉強して、「年間100本観る」というのをノルマにしました。それから他の俳優さんと演劇の話ができるようになり、「あの演出家さんの舞台に出たい」という具体的な目標も出てくるようになりました。だからきっかけとしては、朝ドラの共演者の方からのアドバイスかもしれないですね。

 

WI あえて舞台だけに絞っている、ということはないですか?

橋本 芸能界も、もともとは映画から入っているので、映像も出たいと思っているんです。ありがたいことにオファーもいただくのですが、ここ3年ぐらい舞台でスケジュールが埋まってしまっていてどうしても合わないんです。いまもかなり先まで舞台の仮押さえが入っている状態で……。舞台と映画では楽しみも全然違いますし、それぞれでやったことが還元されるので、両立できたらいいなとは思っています。

 

WI それでも舞台のスケジュールを優先させているということは、やはり舞台に立つことが好きなのだろうと思いますが、続けているいちばんの理由は?

橋本 舞台は“1か月”と短い時間ですが、役者としてひとつの作品を時間をかけて読み解き、キャストとディスカッションし合い世に出して、お金をいただく。これが僕の性格と合っているんです。スピードが速いとのれないこともありますが、基本的に舞台は、ゆっくり時間をかけてトライしてエラーして、自分が納得したものを板の上にあげる。この作業が僕の性に合っているし、自信にもなっている部分なんです。