舞台人・橋本淳。プライドが高く繊細で弱い“少年俳優”を通して感じたこと

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舞台を中心に活躍の場を広げている気鋭の俳優、橋本淳(はしもと あつし)さん。

芸能界デビューは、2004年に出演したドラマ『WATER BOYS 2』、2007年には『連続テレビ小説 ちりとてちん』にてヒロインの弟・正平を好演。

その後もテレビや映画などに出演していますが、この10年で舞台の出演本数が徐々に増えていき、今年は今出演中の舞台『CERSSIDA(クレシダ)』で4本目。この後も、絶えず舞台出演が決まっています。舞台では宮田慶子さんや宮本亜門さんといった錚々たる演出家の作品への出演が続き、演劇界では名の知れた存在。にもかかわらず、公式的なプロフィール以外で、彼に関する情報を知る手だてがほとんどないというのが現状。

一体、橋本淳ってどんな人……?

これまで取材らしい取材も受けず、気づけば10年経っていたという橋本さんの「空白の10年間」。聞けば、“橋本淳”という人間のプライベートをあえて出さずに生きてきたのには確固たる理由がありました。

後半はコチラ→ 橋本淳が舞台中心となるきっかけは、朝ドラの共演者。「年間100本観劇」をノルマに

 

┃1630年代。舞台で女を演じていたのは、変声期前の“少年”

橋本さんが現在出演している『CERSSIDA(クレシダ)』の舞台は、1630年代のロンドン。かつて名優と名を馳せた演劇指導者と彼を慕う少年俳優たちによる物語です。演劇が娯楽のこの時代、舞台で“女性”を演じていたのは声も体も成熟していない変声期前の少年たち。そのひとりであり、少年俳優のスター的存在“ハニー”を橋本さんが演じています。

「ハニーは18歳。スティーブン(浅利陽介さん)は14歳、グーフィー(碓井将大さん)とトリッジ(藤木修さん)は15歳です。当時、少年俳優は16歳ぐらいで引退するので、ハニー自身、『もう無理だ』とわかっています。シャンク(平幹二朗さん)にスティーブンの演技指導を任されても拒否せずやっていたのは、負い目と焦りがあったから。教えてあげることで、恩を押し売りできる。そう僕は感じました。ハニーはプライドが高いけれど繊細で弱いというバックボーンもあると思って演じています」(橋本さん)

いまでこそ女性の役を女性が演じるのは当たり前ですが、当時、女性の役を少年が演じ、時に、性別を超えた愛が垣間見られる瞬間も……。濃密なお芝居でありながら、劇中の会話劇は物語の背景を知らなくても楽しめる。少年俳優たちの足の引っ張り合い、そして認めざるを得ない才能を前に、彼らがどうするのか。まさに現実世界で起こっているようなことが舞台上で演じられていくという面白さ!