最近よく聞く『保護犬を飼う』って、どういうこと?

「可愛い犬を飼ってみたい!」と思ったときに、ペットショップやブリーダーより購入する、知り合いから譲り受けるなどの他に、ひとつの選択肢となるのが動物愛護団体などから「保護犬」を迎え入れること。

このたび、保護犬猫マッチングサイト「OMUSUBI(おむすび)」に登録している日本全国の保護犬101匹を救うためのプロジェクト「#save101dogs(セーブ・101・ドッグス)」を、ドッグカメラ「Furbo(ファーボ)」を展開するTomofun株式会社がスタート。保護犬か保護猫いずれか最低1匹を迎え入れたすべての里親の家族101組に、Furboを無償提供するそう。

このようなプロジェクトをはじめとして「保護犬」についてインターネットなどで見かけることが増えており、保護犬について知る機会は増えています。

でも、そもそも保護犬を飼うってどういうことなの? ペットショップなどで迎え入れるのとはどう違うの?と気になりませんか?

そこで今回は、保護犬についてよく知る公益社団法人アニマル・ドネーション代表理事の西平衣里さんに、保護犬の概要や、保護犬を受け入れるときに知っておきたいことについて教えてもらいました!

 

*記事の中に登場するワンちゃんの写真は、すべて保護犬です。

 

「保護犬」のこと、教えて!

まずは保護犬について、基本的なことから。

―「保護犬」とは、どんな犬のことを言うのでしょうか?

「飼い主さんが飼育困難になって、動物愛護センターや保健所などの行政に保護された犬のことです。行政以外でも、飼い主さんやブリーダーさんが飼育困難となり、直接、保護団体が保護し、里親募集をしていることもあります。中には、野良犬もいます」

―保護犬をひきとることと、ペットショップなどで購入することとはどんな点で異なりますか?

「ペットショップは純血種がほとんどで、ほぼ子犬です。通常はペットショップに行ったその日から一緒に暮らすことができます。
一方、保護犬は、純血種もいますが雑種も多いです。子犬もいますが、成犬やシニア犬もいます。また、迎え入れるには条件をクリアしなければなりません。家族にすることができると決定するまで、譲渡会に行ったり、面談を受けたり、お試しで一緒に暮らす期間『トライアル』もあったりと、工程が長いというところも異なります」

保護犬をひきとるときに知っておきたいこと

続いて、保護犬をひきとりたいと思ったとき、事前に知っておきたいことを伺いました。

―保護犬ならではの良いことや、ペットショップで買う場合とは異なる要注意ポイントはありますか?

「保護犬をひきとる上で良いところは、保護団体のスタッフがある程度一緒に過ごしているので、性格を把握していることが多いことですね。その性格を事前に知ることができるので、希望の暮らしにあった犬を探すことができる点にあります。
一方、注意すべきポイントは、迎え入れるために自ら動いて探さねばならないことや、手間がかかることだと思います。ただ、その手間は保護犬と飼い主さんがこの先、長く幸せに暮らすためにも必要なことだと思います」

―初めて犬を飼う家庭の場合、保護犬の里親になる際、さらに気をつけるべきポイントはありますか?

「保護犬は、愛護センターの後、保護団体のシェルターや一時預かりさん宅などを経由し、住む場所が安定しないまま、新しい里親さんに迎え入れられることも多いです。そうなると、慣れるまで脱走するリスクはあります。ですので、自宅に脱走防止策として柵や2重リードなどの工夫はすべきです。しかし、犬に新しい飼い主だと認められたとき、つまり信頼を得たときに、犬は安心して多大なる癒しをくれます。これは保護犬を迎える醍醐味だと思います」

―保護犬をひきとるためには、条件が設けられているとのことですが、どのような条件が多いのでしょうか?

「例えば、東京都の譲渡条件(※1)の中には、最期まで責任を持って飼い続けることができる、経済的、時間的に余裕がある、愛護センター主催の譲渡事前講習会を受講しているなどがあります。時間的に余裕があるというのは、例えば長時間留守番をさせることなく、散歩に充てる時間を十分とれることなどを意味します。犬は基本的に留守番が苦手です。もともと集団で暮らす習性を持つ動物だからです。よって長時間の留守番や、散歩に行けないような家庭は難しいと思います。
その他、家族構成、年齢、住環境などの条件が設けられていることもあります。動物福祉的な観点から、散歩の回数を定めている国もあります。
初めて犬と暮らす方でも問題はないと思います。ただ、保護犬のほうに吠えやしつけ面などで問題がありそうであれば、犬に慣れている飼い主さんがよいと思います」

※1 参照:東京都動物愛護相談センターwebサイト https://wannyan.metro.tokyo.lg.jp/center-kara/#p1

―保護犬はどのように選ぶといいですか? 相性を知るポイントを教えてください。

「自分のライフスタイルと合った犬を選びましょう。まずは犬種による性質や傾向を知ること。これを理解しておいたほうが、のちのち飼い主さんも犬もお互いが幸せになれます。例えば、猟犬の大型犬であれば、小さなマンションで飼育するのは難しいかもしれません。犬種による違いを理解した上で、次は個体それぞれの性格を見てください。そして犬にとってストレスのない環境を作ってあげてほしいです。トライアルを必ず行い、その際にしっかりと見極めましょう」

犬を飼いたいと思ったときの、一つの選択肢となる保護犬。ペットショップとの違いをよく理解した上で、手間を惜しまず地道に相性のよい犬を見つけるのがポイントであるようですね。条件をしっかり確認して、興味がある人は、ぜひ取り組んでみましょう。

●教えてくれた人…西平衣里(にしひら・えり)さん
公益社団法人アニマル・ドネーション代表理事/マネジメントディレクター。株式会社リクルートで、中途採用情報誌に始まり結婚情報誌「ゼクシィ」の創刊、その後ゼクシィブランドのムック版「海外ウエディング」「インテリア」「ドレス」等の媒体立ち上げに編集制作、クリエイティブディレクターとして携わる。14年の勤務後、ヘアサロン経営者を経て、アニマル・ドネーションを立ち上げる。小さいころから、無類の動物好きで魚・鳥・猫とともに育つ。寄付サイト「アニドネ」運営が、自身の社会貢献と位置づけ、動物との幸せな共生社会実現を心より目指す。

●参考
Furbo「#save101dogs(セーブ・101・ドッグス)」
https://shopjp.furbo.com/pages/2020-save101dogs

保護犬撮影/ムロヒロミ 構成/西村朝子