「髪型」って、なかなか難しいものです。
メイクなら毎日変えられる。でも、髪型は一度変えてしまったら、なかなか変えられない。
ある人がすごくかわいく見える髪型も、また別の人がやったらかわいく見えるとは限らない。そして、以前は最高にかわいいと思っていた、似合っていた気がする髪型が、急にしっくりこなくなることもある。
いったい私たちは、どうやったら「本当にキレイに、かわいく見える、自分に似合う髪型」になることができるのでしょうか?
表参道のサロンNORA Journeyでプロモーションディレクターを務め、人気ヘアサロンの女性美容師と考えた大人女性のためのケアスタイリングブランド「mm(ミリ)」にも携わる、美容師・阿形聡美さんにお話をうかがいました。
Q.似合う髪型は、どうしたら見つけられますか?
A.まず、「似合う髪型」をお客さん自身が見つけようとしなくていいと思います。
確かに、その人自身のお顔の形によって、ある程度の似合う・似合わないはあると思います。ですが、女性の場合特にそれよりも重視してほしいのは「そのときの自分の感情の変化」です。
女性は男性よりも感情や生活の変化が激しいものです。たとえば「恋愛をしたい」ときは、前髪を作るなど、かわいく見られたくなる。「お仕事を頑張りたい」「新入社員として気合いを入れたい」ときは、しっかり大人っぽく見せたくなる。
実は、そういった「自分の感情の変化」にきちんとその髪型がフィットしてるかどうかが「似合うかどうか」という点でいちばん大事だと言っても過言ではありません。
まずは今の自分がどうなりたいか、どう見られたいのかを考えていきましょう。
Q.なんとなく今より良くはなりたいけど、どうなりたいかがわからないのですが……。
A.一度「褒められて嬉しいワード」を書き出してみましょう。
「今、自分が褒められて嬉しいワード」を書き出してみると、自分が今なりたい像が見えてきます。
「美人」なのか「かわいい」なのか。「大人っぽく見える」なのか「若く見える」なのか。「女性におしゃれと言われるのが嬉しい」なのか、「女性より男性にかわいいと褒められたい、今はとにかくモテるのが嬉しい」なのか。どんなものでも構いません。
その「嬉しいと感じるキーワード」を、恥ずかしがらずに美容師さんに相談してみると、なりたい自分に近づきやすくなると思います。
美容師サイドとしても、ずっと通ってくれているお客さんに関しては、どんな仕事をしていてどんな服のスタイルなのかがわかっているので、そこも考えて似合う髪型を提案していけます。でも、初めて来てくれた人の場合は、今日の服装がいつものテイストなのか、そうじゃないのかさえもわからない。だから、そういったワードを教えてもらえると、こちらも提案がしやすくなります。
芸能人の方で例を挙げると、女優の菜々緒さんがお客さんとして来たとします。今の菜々緒さんは「かっこいい、強い、綺麗」なイメージですよね。でももし菜々緒さんに「柔らかく、優しく、かわいく見せたいです」と言われたら、言われないときとやるべきことは全然違ってくる。前髪を作る、髪色を明るくする、レイヤーを入れる、パーマをかける……その中からイヤなことを削って可能な髪型を提案していきます。
Q.「褒められて嬉しい」の他に、これを伝えるといい、というものはありますか?
A.「髪型に関するトラウマ」を教えてほしいです。
人って、好きなものはそのときどきで変わるんですけど、嫌いなものってそんなに変わらないものなんです。
たとえば「前髪を作ったけど幼すぎてイヤだった」とか「ショートにしたら丸くなったり跳ねてしまったのがイヤだった」とか、どんなことでもいいです。過去のイヤだったことはもちろんですし、「やったことはないけどこれはイヤ」でも構いません。
そして同じ「前髪がイヤだった」でも、人によってどんなポイントがイヤなのかは変わってきます。前髪自体がそもそもイヤなのか、それとも以前切った前髪のデザインが悪かったのか、前髪を切ったことによってセットするのが面倒でイヤだったのか。どうイヤだったかによって、こちらの対処法も変わってきます。
ただ、ひとつ気を付けたいことは、大人になればなるほど、自分はこうでなければいけない、という決めつけや思い込みがどんどん強くなっていくことです。
たとえば「前髪はイヤだ」とかたくなに思っていた方がいました。その理由を聞くと、「小学生のときに前髪をぱっつんにしてすごくいじめられた」というもの。もちろん子どもの頃イヤだったことはなかなか乗り越えにくいものです。でも、小学生と大人になった今ではもちろん何もかも違うし、前髪を作ったところで、大人の場合たいていはぱっつんではなくちょっと流しますよね。だからなりたい雰囲気とイヤだった理由を両方聞いて、今なら違うかもしれないから、一度やってみよう、と提案することは、何回か通ってくれているお客さんだとありますね。一度トライしてみることで、今まで絶対にイヤだと思っていたことが覆って「これもかわいい!」と思っていただける例もいくらだってあります。
Q.雑誌やインスタを持っていっても、あまりイメージ通りにならないのですが、どうしたらいいですか?
A.「好きな髪型」「なりたい自分」「これはイヤだということ」の3つをしっかりと共有してみましょう。
「今回の髪型似合う気がする!」と「なんか違う」は、どうなりたいか、何がイヤか、のコミュニケーションが美容師さんとうまくできていない可能性が高いです。もしくは、美容師さんの腕がないということもあるかもしれませんが(笑)。
たいてい、雑誌やインスタなどで見つけた「こういう風にしたいんです」という髪型を、ドンズバその通りに自分もやりたい、という人はそれほど多くなくて、「こういう雰囲気で、私に似合う感じになるといいな」と思っている人がほとんど。
一度「私はこういうのが似合うんです」という決めつけはスルーして、「好きな髪型」「なりたい自分・褒められて嬉しい言葉」「髪型に関するトラウマ」の3つを伝えると、それに応じて美容師さんがパターンを提案してくれるはずなので、その中で今の自分にフィットする、やってみたいものを選ぶと、そう失敗はないと思います。
それでも合わないなら、やはりそれは美容師さんの腕。カットの技術は3回行けばわかります。1回めは正直、前の美容師さんの履歴がまだ残っています。恋愛でも付き合った当初は過去の恋人の影がちらつくような感じですね(笑)。1回めで「この人なんかイヤだ」と思ったらもちろん2回めは行かなくていいですが、「この美容師さん自体は好きだけど、なんかちょっとイメージと違う感じになったかな?」くらいだったら、もう1回行ってみると次はしっくりくるかもしれない。恋愛でもごはんに3回は行ってみたほうがいいとか、それと同じですね。美容師探しは恋愛と通じるところがあります(笑)。
美容師さんと思いを共有することが何よりも重要なポイントのようです。つい恥ずかしがってしまい、本当に思っていることを伝えられない……という方も多いかと思いますが、一度しっかりと伝えてみると、これよりもずっとかわいい髪に仕上がりそう♪
次回は「ロングをばっさり切りたい」「前髪を作ってみたい」「カラーをガラッと変えてみたい」……そんな大幅なイメチェンをはかりたいとき、うまくいく人と失敗する人の違いについてうかがいます。(後藤香織)
★次回はコチラ→ ロングをばっさりカット、前髪、カラー…。イメチェンが成功する人・失敗する人の違いはコレ【美容室のお悩み相談室】
表参道のサロン NORA Journeyでプロモーションディレクターを務め、雑誌のヘアページやタレント・アイドルのヘアメイクなど引く手あまた。女性が女性であることを最高に楽しむ「エロ髪」を得意としている。2018年11月から販売を開始した、人気ヘアサロンの女性美容師と考えた大人女性のためのケアスタイリングブランド「mm(ミリ)」にも携わる。
mm 公式サイト http://www.mm-life.com/
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