『仮面ライダー』出身の小澤廉。“2.5次元俳優”と呼ばれることに「誇り」

WI 中学の時、芸能界に興味を持ったのは何かきっかけが?

小澤 映画がすごく好きだったんです。だから、友だちを映画館に誘ってたんですけど、中学の時だからあまりお小遣いってもらえないじゃないですか。僕は近所に祖父母が住んでたので、お小遣いを1000円もらって、そのお金で映画を観に行ってました。電車賃がもったいないから映画館まで歩いて行って、映画だけ観て帰ってくる。映画の中には感動することがいっぱいあって、人に感動を与えられる仕事って素敵だなと思ったし、人の生き方に影響をおよぼすことができる芸能の世界に強い憧れを持ちました。だから、きっかけとしては中学時代によく観ていた映画からだと思います。

小澤廉,2.5次元,男水,平光希,仮面ライダー,十四松

 

┃“2.5次元舞台”に立つプレッシャー。「毎公演、頭にニキビができる」

WI 芸能界に入って、いまは「2.5次元の舞台」を中心に活躍されていますが、いちばんの魅力はどこにあると思いますか?

小澤 僕が演じさせていただいている2.5次元の作品は、人気の原作ばかりです。だから、プレッシャーもすごい。でもそのプレッシャーを糧にヤル気も出てくるんです。舞台では、アニメや漫画の中で描かれていない部分も観れるシーンもあって、その描かれていない部分は、役者が想像しながら表現しないといけないんです。「このシーンはきっとこういう感情で、こういう表情をしてたはず」とか、コマの外側も観られるのが2.5次元舞台の特徴のひとつだと思います。そこでの解釈ってひとりひとり違って当たり前で、観に来てくれたみなさんとの解釈の違いも必ず起こると思うんですけど、間違っているかもしれない……と思わず、「俺はこう思ったから、こう演じています」という絶対的な自信を持って舞台に上がることが大事だと思ってます。

 

WI 2.5次元の舞台のプレッシャーで、舞台に上がるのが「怖い」と思ったことはありませんか?

小澤 怖いと思うのは、情報解禁の後です。いろいろ言われることもあります。でも僕らは、観に来てくださるみなさんのことを考えて仕事をしなくちゃいけないので、原作ファンの方を裏切らないように、原作をリスペクトして、できるだけ原作のキャラクターに忠実に演じることが義務だと思っています。原作という“母親”から、キャラクターという“子ども”を預かっているような気持ち。もちろん原作に近づかせることに極力努力をしますが、僕はその中に、小澤廉が演じている意味を持たせたいので、ちょっと色をつけたり、先ほど話したコマ外の観られなかったシーンを作り上げていくことも、2.5次元俳優と呼ばれる僕たちの仕事なんじゃないかなって。

 

WI その「2.5次元俳優」ですが、周囲から呼ばれるキャッチコピーのようなものですよね。小澤さん自身、そう呼ばれることに抵抗はないですか?

小澤 僕は全然気にしていません。「イケメン俳優」とか「2.5次元俳優」といったいろんな呼び方がありますけど、周りからの評価が自分の仕事の評価というか……。僕の場合、まずは名前と顔が一致するほど有名になったところから、僕が目指してる道につながると思っているので、原作の人気や恩恵を受けていることに感謝をしつつ、「2.5次元俳優」と言われることにも誇りを持って仕事をしてます。

 

WI そんな小澤さんが最もプレッシャーだった役を聞いてもいいですか?

小澤 ……『おそ松さん』の十四松、ですね。すごく人気の作品で、社会現象にまでなってたことはもちろん知っていたんですけど……実は『おそ松さん』の舞台が決まるまでアニメを観たことがありませんでした。キャスト解禁の発表があった時、舞台『あんさんぶるスターズ』の公演中で、高崎翔太くん、北村諒くん、赤澤遼太郎と、6つ子の4人が一緒だったんですが、ひとりで帰るのがちょっと心細くて……「今日はみんなで一緒に帰ろう」ってことがありました。他にもトラブルがあったりしたので、僕はより一層プレッシャーを感じてしまったんです。でも、だからこそ「やりきろう」と決心しました。プレッシャーを糧に、原作ファンの方も裏切らないように。アニメもずっと観て十四松のことは何でも語れるぐらい、本当にたくさん研究しました。

 

WI ゲネプロの会見の時、それをすごく感じました。他のみなさんもそうだと思いますが、小澤さんはたくさん努力してここに立っているんだなと。

小澤 なかでも「笑い方」には苦労しました。最初の頃は、口を閉じてたんです。口を開けっ放しで演技をするのって難しいし、不可能だって思ってたけど、いろんな人の想いを背負って「やりきる」と決めたことを思い出して「負けてらんねー!」って。それで、舞台に立っているときはできるだけ口を開けて演技をするようになりました。僕は褒められて伸びるタイプですが、ダメ出しをされても伸びるタイプ。だから僕には、役者として伸びしろしかないと思ってます(笑)。

 

WI 何があってもめげずにどんどん伸びてくタイプなんですね(笑)。本番前日には、ちゃんと眠れますか?

小澤 眠れます。だけど……毎回、頭にニキビができますね。プレッシャーとかのストレスをすごく感じているんだなぁと思っているんですけど、頭皮にニキビができるんですよ。だから頭のニキビの状態で、自分のストレス度が分かります(笑)。

 

WI “役者あるある”でよく聞くのが「台詞を全部忘れちゃった」とか、そういう夢を見る方もいるようですが……。

小澤 ある! あります!! 『おそ松さん』で地方公演の時、『薄桜鬼』の時の夢を見ました。台詞も立ち位置も、夢の中で全部忘れてるんですよ。何もかもまったく分からない状態なのに、衣装を着せられて「本番だから行ってください」って言われて舞台に上がるけど、ストーリーすら分からずに進んでいくから、「めっちゃ怖い怖い……ああ、終わったー!」って思いながら目が覚ました(笑)。それで、台詞を忘れるのってこんなに怖いことなんだと思ったから、本番までは気を抜かず、確認作業を怠らないようにしようとあらためて思いました。