永遠に消えない「不安」こそが「夢」への近道┃ニコラス・エドワーズ×「不思議の国のアリス」

■人生の転機が教えてくれた、歌手として、人間として「目指す場所」とは?

Woman Insight編集部(以下、WI) 今回のテーマは「人生のターニングポイント」です。ニコラスさんはまだ24歳ですが、これまでに何度かありそうですね。

ニコラス・エドワーズさん(以下、ニコラス) 僕の人生は、大きく“2つの章”にわけられると思っています。第1章は、アメリカで過ごした17年間。そして、親の元から独り立ちして、親から何の手助けもしてもらえないぐらい遠いところまで来て……2010年6月13日。それが第2章の始まりです。僕は、アメリカで“公文”でアルバイトをしてお金を貯めました。僕、すごく子どもが好きなんです! だから先生のアシスタントとして小さい子に算数とか英語を教えていました。貯めたお金で飛行機のチケットを買って、日本で生活できる少しのお金だけを持って来日して、いろんな事務所に頭を下げたり、レコード会社に行って「どうか歌わせてください」ということを始めたのが、6月13日なんです。

ニコラス・エドワーズ,のどじまん,日テレ,ポートランド

 

WI その日を昨日のことのように覚えているのですね。

ニコラス 細かく言えば、もっといろんなターニングポイントがあります。初めて日本語の勉強を始めた2006年9月5日、初来日した2008年6月30日、「のどじまん THE ワールド!」に初めて出させていただいた2011年6月18日、初めてオリジナル曲を発売した2012年12月19日……。日本に来てから、無茶をしたこともあります。17歳で独り立ちをすることもそうですけど、過去に2か月くらいしか過ごしたことのない海外(日本)に移住していることを考えると、すごく無茶なことしてるって思います(笑)。

 

WI くじけそうになるほど辛いときもあったのでは?

ニコラス 実は、「明日はどこで寝ればいいんだろう」という時代もあったし、「夢」って想い描いていたものと実際に叶うものは違うんだということを思い知らされたこともありました。そうして「歌手」になったいま、歌を歌えればいいだけじゃなく、“次のステップ”に心が進んでいます。それは、歌手として実績を残したい、歌手としての足跡をこの世界に残していきたい、ということ。僕は、17歳で来日して、夢を追いかける過程でものすごく早いペースで大人にならなきゃいけなかった……。不安はきっと永遠に消えないけれど、でも不安や葛藤、迷った気持ちこそが、「夢」まで導いてくれた気がするんです。

 

WI たった7年の間に、人の何倍もたくさんのことを経験したのですね。挫折して帰ってもおかしくないぐらいなのに頑張れたのはなぜですか?

ニコラス これ、知っていますか? “骨”って、二度と同じ箇所で折れないらしいんです。折れた骨が強くなって治るからみたいですが、人生もそんなふうに、一度折れて、そこから立ち直って「二度と同じところでは折れない!」と、強い気持ちと自信を持つこと。そうして前に進んで、大人になっていくのかなって思います。人生では傷を負うこともあると思うけど、恐れずに進もうと。僕は完璧な人間じゃないし、完璧な道のりを経てきたわけでもないし、むしろ道は始まったばかり。この先、まだまだ折れて傷ついて苦しむこともあると思うけど、いまは僕を応援してくれる方もいてくれることですし、歌で気持ちを共有している方もいる。これは当たり前のことじゃないし、むしろすごく恵まれたことだと思っているので、完璧じゃない僕だけど、みなさんの力になれたらいいなって心から願っています。人間なので、笑顔の裏にはいろいろ抱えていると思うけど、傷っていつかは癒えていくものだし、僕はそういう人たちの居場所を音楽で作ってあげられたらいいなって。歌手としてというか、それは人間として目指したい場所。アーティストである前に人間なので、それも音楽に生かしていければいいなと思ってます。

ニコラス・エドワーズ,のどじまん,日テレ,ポートランド

 

WI ライブに来ているファンのみなさんの表情から、ニコラスさんのその想いは伝わっている気がします。日本に来て自分自身のことで「変わったな」と思うことはありますか?

ニコラス 「17歳の自分だったらこんなこと納得しないはず」ということも、大人になって、いろんな責任を負うようになったいま、納得できてしまう自分がいるんです。逆に17歳の頃ならこんなことで怒るはずはないのに、いまはそれが嫌な気持ちにさせることもあります。そんな変化に対して、「それでいいのか」と、毎日確認しなきゃいけないなって思います。自分の人生の“いちばんいい時期”は、いくつになっても常に未来にあってほしいから、「あのときはよかった」、「あのときこうだったのに」と思いたくないんです。17歳まで過ごしたアメリカでの時間は、本当に幸せでした。でも日本に来てからも幸せですし、ある意味では、アメリカにいた頃よりもっと幸せになっていると思います。……10代までの親に与えてもらった幸せではなくて、自分で手に入れた人生という意味では。たくさんの方が支えてくれるおかげと、自分が叶えていきたい夢を持っていることで、理想とする自分に近づいていることができているはず。いまは毎朝、起きたら鏡を見て「自分が思い描くいちばんいい未来まで進めている?」と自問自答をしています。これは父親にやるよう言われたことで、毎朝、鏡の中の自分と向き合って「できていないな……」と感じた日は、「マジ頑張らなきゃ!」って気持ちにもなるんです(笑)。