監禁をする男、される女、任される男…舞台「イヌの日」キャスト放談

“イヌの日”──1年でいちばん暑い日。

長塚圭史さんの戯曲『イヌの日』が、2000年の初演、2006年のリメイク上演を経て、2016年夏、松居大悟さん演出で新たによみがえります。

本作は、小学校の初恋の女の子を、15年間“防空壕”に監禁する物語。

子どもの頃のちょっとした好奇心で、15年もの間、防空壕に閉じ込めてしまう。これだけ聞くと、ただのサスペンスやスリラー作品のように感じさせますが、防空壕の中と外で繰り広げられる複雑な人間模様を、どのキャラクターの視点で物語を観るかによって、まったく違う結末が見えてくる……そんな作品です。

キャストは、登場人物と重なる30歳前後の同世代たち。今回Woman Insight編集部では、物語の中心となる、尾上寛之さん、玉置玲央さん、青柳文子さんの放談インタビューをお届けします。

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(写真左から:玉置玲央さん、青柳文子さん、尾上寛之さん)

監禁をする男―尾上さん、監禁をされる女―青柳さん、監禁を任される男―玉置さんと、舞台上では奇妙な関係の3人。取材当時は、稽古がスタートして2週間が終わる頃。「絶賛模索中」という彼らに、作品のことから自身の“初恋”のことまで聞いてみました。

 

Woman Insight編集部(以下、WI) ハッピーエンドという物語ではないのでストーリーだけ読んだ感じだと、受け手次第でいろんな解釈ができてしまう作品ですが、稽古段階ではみなさんどう感じていらっしゃいますか?

尾上寛之さん(以下、尾上) この物語の答えを誰も知らないんです。演出の(松居)大悟も、(長塚)圭史さんから答えをすべて聞いているわけでもなく、集まったキャストみんなで考えながら作っているという感じですね。台本の解釈も自分たちが思ったまま、感じたままを出していて、「こっちが面白そうだから一度やってみようか」という感じ。もちろんそれぞれの場面で着地点はありますが、稽古が始まっていま2週間、いろいろと試している段階です。

 

WI 稽古場の雰囲気は明るく楽しそうですね。

尾上 雰囲気はめっちゃいいですね。みんなすごく仲がよくて、居心地がいいです。

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WI 青柳さんはおふたりとは初共演かと思いますが、尾上さんと玉置さんから見た青柳さんの初対面の印象はどうでしたか?

尾上 初めて会ったのは、(大窪)人衛が出ていた『太陽』という舞台を観に行ったときです。ヤギちゃんは、「不思議な雰囲気の人だなぁ」って感じでした。

青柳文子(以下、青柳) ……ふぅ~ん(笑)。でもそのとき、ヒロさんは具合が悪かったらしいんですけど、私はそれを知らなかったので「この人怖そうな人だな……」って印象でした。勇気を出して「ご飯行きますか?」って誘ったのに、「いや、帰ります」とか言われて(笑)。

尾上 具合悪いからって、その時に言ったよ(笑)。

青柳 だけど、稽古に入ったら全然印象が変わりました。すごくいい人です(笑)。

玉置玲央さん(以下、玉置) いいお兄ちゃんでしょ?

青柳 うん。でもマイナスから入るといいですよね。その後は上がるしかないから(笑)。

尾上 どういうこと?(笑)

玉置 僕が最初にヤギちゃんと会ったのは、読み合わせのときかな。そのときは、特別何か感じたということもなかったですけど、「お腹空いてるのかな」と思ったぐらい。ヤギちゃんは、お腹が空くとそれが行動に出るらしく、僕がそのときパンを持ってたんですけど、そのパンを……

青柳 ずっと見てました(笑)。

玉置 だから、ヤギちゃんには何か食べ物を与えておけば大丈夫なんだなって(笑)。

青柳 あ! だからですか? 稽古のときにいつも目の前にお菓子を1個置いていってくれるんです(笑)。それもあってレオさんは、最初に会ったときからいまもずっと、面倒見のいいお兄ちゃんってイメージですね。

 

WI 舞台の内容についてお聞きしますが、子供のころの好奇心がきっかけで15年もクラスメイトを監禁してしまうという話でしたが、みなさんは好奇心旺盛な子どもでしたか?

玉置 そうですね……ここでは言えないようなこともいっぱいやってきました(笑)。無鉄砲な性格で、「どれぐらいの高さから飛び降りたら脚の骨が折れるのか」みたいな、ね?

尾上 やったやった!

玉置 そういうのを追い求めちゃうというか、誰かがケガをするまで止めない(笑)。これって男女差あるのかなぁ。どうだった?

青柳 女子はしないよ、そんなこと。

玉置 たしかに小学生のころとか、女子のほうが大人だったかも。ケガするまで遊んでる男子を見て、「バカだな」って感じで(笑)。

尾上 そういえば僕、この前、子どもたちと触れ合う機会があったんです。7人ぐらいで女の子3人ぐらいかな。男の子4人ぐらい集まると、「俺がいちばん強い」みたいな争いになるんですよ。

玉置 わかるわ、その感じ。超かわいい。

尾上 そのなかで、大人の僕に男の子が次々とパンチしてくるんですよ。「俺のパンチがいちばん痛いだろ」って。女の子の前で自分の強さをアピールするための方法なんでしょうね。子どもは残酷だなって思いました(笑)。でもそのときは「みんな強いぞ~」って、優劣つけなかったですけどね。そこで順位をつけたらまたケンカになるだろうなって思ったから。

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WI 優しいですね(笑)。ところで、物語の中心にいるのは間違いなく“菊沢”なのですが、小学とか中学のころとか、どこかミステリアスな、みんなの輪から少し外れているような女子っていませんでした?

玉置 いたいた!

尾上 それに、クラスでちょっといじめられている女子を守りたくなる男子の気持ちもわかりますね。

 

WI 世の中には、言葉に出して「お願い」と言わなくても、放っておけないと思わせる人っていますよね。黙っていてもいろんな人から手を差しのべてもらえる人。

尾上 いますね。いわゆる魔性の女的な。どんどん自分のほうに巻き込んでいく人。

青柳 それに対して悪びれず、自覚もある。菊沢はそんなキャラかなって思ってます。だけど演じていて本当に難しいです……。何を考えているのかわからないし、なんで15年間も閉じ込められているんだろうって。防空壕に、どんな気持ちで入ったんだろうとか……私はまだまだ模索中です。

 

WI 難しそうですけど、青柳さんの言う「自覚があって悪びれていないところ」がいちばん“悪い部分”でもありますよね、男にとっては。

尾上&玉置 本当にそう!

青柳 悪いのか……。そう言われると、怖いな菊沢(笑)。

 

WI この子のために何かしてあげたい、それにちゃんと見ていないと一瞬で他に行ってしまいそう……という不思議な魅力が、よくも悪くも多くの人を巻き込んでしまっている。菊沢はそんなキャラなのかなと思いましたが、青柳さんからもそういう雰囲気を感じたので、菊沢という役がハマっている気がしました。

青柳 ……ふっふっふっふ(笑)。

(全員笑)

青柳 でも頑張ってますよ。菊沢の感情は他人に悟られてはいけないキャラのように思うし、でもわからなすぎるのもダメ。心が見えない人のお芝居って難しいですね。

尾上 まだ時間があるから、少し探りながら正解に近づけていければいいよ。

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>【後編尾上寛之×玉置玲央×青柳文子の「初恋」の話┃「イヌの日」キャスト放談

 

舞台『イヌの日』
http://inunohi.wixsite.com/2016

2016年8月10日(水)~21日(日)@下北沢 ザ・スズナリ
高校を卒業後、進学も就職もせずに悪友たちと遊び暮らす広瀬幸司(玉置玲央)。ある夏の始め、仲間のひとりである中津正行(尾上寛之)からある仕事を頼まれる。それは、中津が留守にする間、「ある人たち」の面倒を見てくれというものだった。大金に釣られ安請け合いした広瀬だが、その「ある人たち」とは恐るべき状況下にある者たちだった──。
■作:長塚圭史
■演出:松居大悟
■出演:尾上寛之 玉置玲央 青柳文子 大窪人衛 目次立樹 川村紗也 菊池明明 松居大悟 本折最強さとし 村上 航
/加藤 葵 一色絢巳

(取材&文:さとうのりこ)

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