ライターの後藤です。ある日突然、こんなお誘いをいただきました。
「後藤さん、ラマダンのドバイに行きませんか?」
「…それは、過酷確定イベってことですか?」
ラマダン。ざっくり説明すると、イスラム教の断食月。信仰心を高めたり、家族や地域コミュニティの絆を深めたりする、神聖な月。イスラム教徒は、日の出から日没まで断食をします。太陽が出ている間は、食事をしないのはもちろん、水も飲まず過ごす、とのこと。
こう聞いているだけで、普段イスラム教の文化に触れることがほぼない私は、かなり怖気付きました。
「いえ! ラマダンのドバイは、実は旅行におすすめなんですよ」
「そんなことあります??」
疑心暗鬼全開で話を聞いていると、ドバイがあるアラブ首長国連邦(UAE)は、イスラム教を国教とし、人口の大多数がイスラム教徒です。その中で、ドバイは9割がUAE以外の国籍の人と言われ、戒律なども比較的穏やか。旅行客は普通にレストランで食事をとってもまったく問題ありません。ただし、やっぱり「ラマダンの時期は大変そう」というイメージが強いため、観光客はその時期を避ける傾向があります。
「ホテルは普段より安く泊まれることが多いですし、観光地が空いているんです。さらに、この時期だけのイルミネーションやプロジェクションマッピング、ホテルの特別ビュッフェ、ハイブランドの特別ラマダンコレクションや、ラマダン時期だけのコフレもあったりして…」
「そんなことあります????(2回め)」
ものすごくざっくり解釈すると「クリスマスやお正月的なイベントの要素もあるのか?」ということ。
というわけで、いざ、行ってみました、ラマダン時期のドバイへ!
移動中に見た、朝焼けに照らされるドバイ・フレーム。
ドバイ・モール
まず「ラマダン」の特別感をあらゆる観点から味わえるのが、ドバイに行ったらまず誰もが訪れるスポット、ドバイ・モール。
ショッピング、エンターテインメント、レジャーと、1200軒以上のショップや大手デパート、ドバイ水族館、アンダーウォーター動物園、アイスリンク、数百もの飲食店と、「ここに行っておけば間違いなし!」な場所です。
そんなドバイ・モールは、ラマダンの時期になると、ラマダンのモチーフである三日月や星、ランタンなどで特別仕様に飾られています。
一説では、三日月と星はイスラム教のシンボル、そしてランタンはラマダンで断食後の食事(イフタール)を照らす光の象徴。
館内やブランドのショーウィンドウが飾られていてとってもかわいい♡
靴売り場に早速「Ramadan Exclusive」と書かれたラマダン限定商品を発見。コスメデパート「セフォラ」では各ブランドから出ているラマダンコフレが大量に並んでいました。
LG階(日本では地下1階)にある、お菓子などのばらまき土産が多数購入できると人気のスーパーマーケット「ウェイトローズ」もラマダン仕様。
キットカットまでラマダン限定パッケージを見かけました。
レストランにもラマダン限定メニュー。
また、メニューの上のほうに書かれている“Ramadan Kareem”は、『恵みの多いラマダンおめでとう』といった意味。クリスマス時期の“Merry Chirstmas”に近しい使い方をされているように感じるほど、本当によく見かけたフレーズでした。
スイーツ店のウィンドウにもRAMADAN KAREEM発見。
ドバイモールでかなりリーズナブルにお土産を買える「ダイソー」にも大量にラマダンの飾りが売られていました。
ハイブランドからダイソーまで、本当にラマダン尽くし! こんなにみんなが楽しみにしているイベントだったんですね、ラマダンって……!
ちなみにダイソーでは「Ramadan Kareem」とアラビア文字、そしてラマダンのモチーフである月やランタンが描かれたリボンを4色も買ってしまいました。いつ使うのかは不明ですが、かわいいので良いのです!
さらに現地のダイソー的な雑貨屋さんでは、折りたためるポータブルお祈りマットを発見。メッカの位置がどこにいても見られるマット、記念に買うか3分くらい悩んで一度保留。
※その後もう一回戻ろうとしたら、ドバイモールが広すぎて、お店がどこにあったかわからなくなりました。一度保留したお目当てのお店の位置は、何かにメモっておきましょう!
個人的にかなり面白かったのは、Second階(日本では3階)にある、「Kinokuniya Bookstore(紀伊國屋書店!)」で見かけた「ラマダンジャーナル」。
ラマダンで叶えたいことや祈りたい内容、イフタール(断食明けの食事)、お水を飲んだ回数やお祈りのチェックなど、あらゆる記録ができるノート。こちらもアラビアンな表紙がかわいくてつい購入。こちらもいつ使うのかわかりませんが、現地の文化を知るのに役立ちそうで買ってしまいました。
さらに、ラマダン時期は、お祈りの時間になると、館内全体に時間を知らせるお祈りの呼びかけ(アザーン)が流れます。これがかなり「THE・中東」という感じで興味深いので、ぜひ一度聞いてみてください。
住所:Downtown Dubai, Dubai
営業日と時間:10:00am – 11:00pm(月~木曜), 10:00am – 12:00pm(金~日曜)
公式サイト:https://thedubaimall.com/
Visit Dubai(日本語):https://www.visitdubai.com/ja/places-to-visit/dubai-mall
ラマダンキャノン
そんなドバイ・モール付近など、何ヶ所かで行われている、断食の終わりとなる日没を知らせる大砲発射の儀式が「ラマダン・キャノン」。10世紀のエジプトに由来し、ドバイでは1960年代から続いている、人気の伝統行事。月の満ち欠けによって毎日数分ずれがあるため、日の入りの時間ぴったりに、大砲の爆音で合図をしているのです。
想像の5倍くらいの爆音が鳴り響くのですが、ここから先はこの日の断食を終えられるので、「皆さん、よかったねぇ…」とひしひし感動します。
ちなみにドバイ・モール付近のラマダンキャノンエリアは、あまり混まずにドバイの象徴バージュ・カリファと撮影ができて、そちらもおすすめです。
ラマダン・テント
ラマダンに欠かせないのが「イフタール」。日没後にいただく食事を指します。「ラマダンの時期って、過酷な断食をするから、終わったら激ヤセしちゃうんじゃないの…?」と思いきや、その分この「イフタール」で1日分食べまくるため、むしろ体重が増える方も結構いるとか。
その「イフタール」を提供するのが、「ラマダン・テント」です。従来のイスラム教信者向けのもののほか、近年ではレストランやホテルが華やかなラマダン・テントを実施。断食をしていないイスラム教信者以外や私たちのような旅行者でも、誰でもイフタールを楽しむことができます。
今回訪れたのは、ヤシの木をかたどったドバイの代表的な人口島・パーム・ジュメイラに位置する「ウォルドーフ アストリア ドバイ パーム ジュメイラ」。
日が落ちてくると遠くにドバイの摩天楼の夜景が見えて、なんだか非現実的な光景…。
この日もカップルのディナーや、仕事関連の仲間と思われる方の会食など、さまざまな用途に使われていました。日本のクリスマスディナーと忘年会を掛け合わせたような文化なのかも…? テーブルに用意されているだけでもかなり量があるように見えますが前菜セット。この後、ビリヤニ、ロブスターやラムステーキなど、ビュッフェスタイルで好きなものを好きなだけ楽しめます。
好きな具材を好きなだけ目の前で焼いてもらえます。
異常に美味しかったビリヤニ。(お肉がでかい)
そもそも断食明けの方のための食事のため、当然ですが量がかなり多い! ラマダン・テントを訪れる際は、セルフ断食とまでは言いませんが、朝も昼もかなり少なめにしておくのが良さそう。
街中が特別なライトアップに包まれていました
観光地や街中が、どこもかしこもラマダン仕様。たとえば、ジュメイラ・モスクをはじめとした伝統的なモスクは、ラマダンの時期のみスペシャルなライトアップに包まれていました。
中東らしい雰囲気が人気のスターバックスをはじめ、歴史的な街並みの中でショッピングやカフェめぐりを楽しめる人気のレジャー地区、アル・シーフもスペシャル仕様に♡
観光スポットのみならず歯医者さんまでラマダンイルミネーション。
さらに、イルミネーションとは少し異なりますが、「スーク(市場)」では、断食明けの時間が近づくと、スークで働く人用に、ずらりと路上に軽食セットが準備されていました。
このような文化があることを知らなかったのでかなり驚き。壮観です。
SMCCU Iftar
キラキラしたラマダンも楽しいけれど、やっぱりせっかくならきちんとした文化を学びたい…という方におすすめなのが、イスラム教の文化や習慣を学べる施設・SMCCU(シェイク・ムハンマド文化理解センター)のイフタール。
ここでは、アル・ファヒディ歴史地区にある風の塔を改修した美しい建物内で、アラビア語レッスン、遺産ツアー、モスク見学などさまざまなプランを体験可能。今回は、ラマダン時期にのみ行われる、イフタールとモスク見学のプラン(AED180)を。通常は、朝食やランチ、ディナーをいただきながら話を聞くCulture Meal プログラム(AED130〜160)を実施しています。
まずはラマダンやイスラム教についてお話を聞き…
日没になったら、栄養豊富なデーツとお水をまずはいただくのが現地スタイル。私たちも同じものをいただきました。
そして、カレーやビリヤニ、サモサなど美味しいイフタールをいただきます。どれも美味しい!
最後はモスク見学でシメ。女性はストールで髪を隠す必要がありますが、貸し出しもありますよ。
住所:House 26 & 47, Al Fahidi Historical Neighbourhood, Al Musallah Street, Bur Dubai, Dubai
H Pリンク:https://cultures.ae/
Visit Dubai(日本語):https://www.visitdubai.com/ja/places-to-visit/sheikh-mohammed-centre-for-cultural-understanding-smccu
中東らしさをいつもよりたっぷりと味わえるラマダン期のドバイ。2026年は2月17日から3月19日頃の予定です。ぜひ、旅行の案に加えてみてくださいね。
次回は「リーズナブルにドバイを楽しむ方法」をご紹介。お楽しみに!