京都といえば、美味しい食文化が有名ですよね。あれもこれもと、旅行に来たらついつい食べ過ぎちゃうという人も多いのでは?
なかでも、地域独自の文化を生んだのが京都発「京寿司」です。美しさが尊ばれるこの地で、職人は寿司の中にも美しさを探求し、技を磨きました。
『和樂』2016年10・11月号では、京寿司を今に伝える名店を紹介しています。折箱に広がる見た目も鮮やかな京寿司の魅力をお届けします。
◆いづう
もともとは郷土料理だった鯖寿司に「鯖姿寿司」と趣のある名を付け、上方の寿司として最初に売り出したのがここ。創業は天明元(1781)年、祇園の中心部で開店。「京ちらし」は、1人前から持ち帰りができますが、おすすめは3人前以上の大きさ。隙もなく描かれる美しい景色は、広いほど手の込みようにうならされます。
いづう
住所:京都市東山区八坂新地清本町367
電話:075-561-0751
営業時間:11時〜23時(日曜・祝日は22時まで)
定休日:火曜休(祝日は営業)
持ち帰りの折詰は事前予約可能。店内に飲食のできる腰掛処あり。
◆いづ源
大正時代に開業した「いづ源」。屋号に「いづ」が付いていることから想像がつくように、上に紹介した「いづう」からのれん分けしたお店です。折箱に据えたのは、京寿司といえば「鯖・箱・巻」と言われる、鯖寿司、箱寿司、巻寿司(太巻)。そして行楽シーズンの到来を告げる「ちらし」。現代の名工の認定を受けている匠が生み出すお寿司は、主人の実直な人柄を表すかのような端正なたたずまい。酢のはんなりとした立たせ方、穏やかな味付けなど、折り目正しい味わいがあります。
いづ源
住所:京都市下京区高倉通綾小路通下ル竹屋町391
電話:075-351-2516
営業時間:11時30分〜18時
定休日:木曜休
店内は小あがり席もある食堂仕様。鯖寿司やいなりを酒のアテに楽しむ常連さんも。
◆千登利亭
酢で締めたり、火を通したりとネタに生ものを使わず、具材や寿司飯に味をつける京寿司。限られた材料の中から趣のある絵を描けるかは職人の腕しだい。建仁寺御用達であり、宮川町と祇園に近い立地を考えれば、この店の特徴であるとがった味を感じさせない、“口どけのいい”寿司のありようにも納得です。
千登利亭
住所:京都市東山区団栗通大和大路西入ル六軒町203
電話:075-561-1907
営業時間:11時〜20時
定休日:木曜休
明治32(1899)年創業。店内で飲食可。お酒を飲みながら、寿司をつまむのもおすすめ。
◆いづ重
折箱の中に、当代主人考案の「ぐじの姿寿司」と「小鯛の姿寿司」がふたつ入りました。ぐじ(甘鯛)は京都で昔から珍重されている魚ですが、水分が多いため寿司には敬遠されてきたもの。いずれも、まろやかな味わいの寿司で、鯖姿寿司の合の手にぴったり。ネタと寿司飯の熟れた味わいを味わうのが京寿司ですが、この店の寿司飯は、時間が経ってもしっかり味わいがあります。
いづ重
住所:京都市東山区祇園石段下
電話:075-561-0019
営業時間:10時30分〜19時
定休日:水曜休(祝日の場合は営業、翌日休)
明治41(1908)年創業、昭和23(1948)年に現在地に移転。店内で飲食可。自家製の酒の肴も美味。
折箱を開けたときの玉手箱のような楽しみがある京寿司。目でも口でも楽しめる逸品はこれぞ口福です。京都に遊びに行く際は、ぜひ味わってみて。(松本美保)
★詳しくは『和樂』2016年10・11月号(小学館)に掲載
【あわせて読みたい】