「日本文化は“かわいい”!」和樂編集長が語る驚きの日本の伝統【編集長インタビュー】

「雑誌の編集長」とは、その時代を作る存在です。

Woman Insightの年末年始企画として恒例になっている、小学館女性誌編集局が発行している『CanCam』『美的』『Oggi』などの雑誌編集長インタビューシリーズ、今回は『和樂』編です。

『和樂』について説明しておくと、「和の心を楽しむライフスタイルマガジン」。和の魅力はもちろん、洋の文化やファッションなど、さまざまなテーマから「本物の美」を提案し、日本のみならず海外でも評判です。

『和樂』2016年1・2月号表紙

さて、そんな『和樂』編集長の高木史郎さんに、今年の振り返りや日本文化の面白さについて語っていただきました。
特に「かわいい」と「日本の伝統」に関する発言に関しての面白いこと……! ロングインタビューを2回にわたりお届けします。

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Woman Insight編集部(以下、WI)よろしくお願いいたします。まず、『和樂』の2015年を振り返ると、どのような1年だったでしょうか?

高木史郎編集長(以下、高木)『和樂』では、2001年の創刊以来ずっと「日本の文化」を取り上げてきましたが、今年は特に「日本美術」に舵を切った年になりました。

 

WI 確かに! 2015年に発行された10冊の特集を振り返ると、かなりの号で日本美術を特集されていらっしゃいましたよね。

高木 5月号で「浮世絵」、8・9月号で「名美術館」、12月号で「かわいい日本美術」、そして最新号の1・2月号で「北斎」と、10回発行したうちの4回が日本美術の特集でした。いずれも非常に注目され、売上もよかったので、日本美術ブームが本当に来ているんだな……ということを実感しましたね。付録も「日本美術」に絡めたものをたくさん作りましたが、手前味噌で恐縮ですがどれもご好評をいただいたんじゃないかな、と思っています。

 

WI 毎号毎号、別冊ですとかなんらかのモノですとか、付録がついていますよね。中でもこれは人気だった、反響が大きかった、というものはありますか?

高木 読者の方から人気だったのは、琳派400周年を記念して作った、2号連続の付録です。8・9月号で「一筆箋・懐紙・ポチ袋」をセットにした「和ごころセット」を、そして次の10月号で、それをしまうクリアフォルダーをつけましたが、これはめちゃくちゃ人気がありました! ひとつひとつは美術館で売っていたとしても、なかなかセットになっているものはないので……。しかも京都国立博物館で行われた琳派の展覧会が2時間待ちになるほど人気になっていたので、そのタイミングで、というのもよかったんじゃないかなと。

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★コロコロ仔犬の一筆箋など、琳派400年を記念した「和樂」の特別付録“和ごころ”セットが豪華すぎ!

 

WI いや、ほんとに毎号豪華なので、すごいな……と思いながら見ています。

高木 『和樂』の主な読者は40〜60代女性なのですが、その世代向けの雑誌って、お箸がついていたり、羽生結弦さんのポスターがついていたりと、付録戦争が起きているんですよ(笑)。その中で『和樂』にしかできない付録、ということで、今後も「アート×グッズ」の付録を作っていきたいですね。最新号の1・2月号では、雑誌ではおそらく世界初となる「カレンダーを2つ」、犬と猿の「かわいい動物ふせん」、そして「葛飾北斎のオリンピック金銀シール」の4つの付録をつけました。どれもアートが好きな方を中心に評価をしていただいています。去年から今年にかけて、高感度なアート好きの女性が新しい読者として増えているように感じます。

 

WI 付録ももちろんですが、2015年、特にこれは人気があった! という特集はどれですか?

高木 今年は8-9月号の「日本の美術館」をはじめとしてかなり完売が多かったです! 特集するたびに毎回人気なのは「茶の湯」「京都」ですね。このふたつもほぼ完売しました。

 

WI 春と秋で2回京都の特集をされていらっしゃいましたよね。

高木 そうですね、4月号ではわりと王道の京都を紹介して、10月号ではマニアックな京都を特集しました。正直、今はインターネットにいくらでも情報がありますが、さらにその先の京都を見てみたい、と思った方に買ってもらえたのではないかな……と思います。ありがたくも、京都の方にも「マニアックなところが掲載されている」と言っていただけました。

 

WI 来年以降も「京都」の特集は継続されていくのでしょうか?

高木 2016年から『和樂』は年6回発行になるのですが、少なくとも1回は特集したい、と考えています。2015年に何度も京都を訪れて思ったのですが、どうしても我々は「東京目線」で京都を見ているため「京都だけのもの」を探してしまいがちです。でも、どんどん増えている、海外から日本を訪れる、いわゆる「インバウンド」の方々にとっては、京都って「日本の代表・日本を象徴するもの」なんですよね。

 

WI 確かに! いわゆる「古くからの日本文化」があんなに広い範囲で見られるのって、京都くらいですものね。

高木 「京都ならではのものを探す」ことも、もちろん京都を特集する上でひとつの手ではありますが、「日本文化の象徴」として考えると、さらに広い旅の提案ができますよね。私たちの生活はかなり欧米化してしまっていますが、京都では町家や食文化、職人のわざなど、「昔ながらの日本」を楽しむことができます。たとえば京都では「町家」を利用した宿や店が人気ですが、もともとは江戸時代までは日本全国に町家があって、あらゆる城下町で見られたものでした。そういう「昔の日本が残っているところ」として京都を見ると、海外の方にとっては特に、京都という街全体が「日本」という国を象徴するテーマパークのように見えるのではないでしょうか。