「インスタ映え」じゃ幸せになれない、でも【インスタ映えで幸せになれますか?】Vol.4

【ゆとり以上バリキャリ未満の女たち】インスタ映えで幸せになれますか?【瑠璃編・第4回(最終回)】


「ゆとり以上バリキャリ未満」を生きる33歳の瑠璃に訪れた突然の転機。今どきの「女の幸せ」ってなんだろう? 世代を超えて共感必至の、女の人生ルポルタージュ、第4回。

「いつかファッションビジネスで独立する」…そんな夢を抱きながら、研究室をパワハラで辞め、キャスティングという転職を見つけた瑠璃。さらに結婚、出産を迎え、彼女の向かう先は……? 瑠璃編、いよいよ最終回!

女の人生ルポ4

 

小林瑠璃(仮名)33歳/フリーランス SNSコーディネーター

1984年神奈川県出身、東京都豊島区在住
職歴/大学院修士課程修了後、アルバイトをしながらフランス語学校に通う。フランスに留学し、1年間服飾学校で勉強して帰国。大学院博士課程に入り研究者として活動。そのかたわら、SNSビジネスを開始。現在フリーランスのSNSコーディネーターとして活動中。
似ているタレント/堀北真希
理想のタイプ/三浦翔平
パートナー/結婚3年目。子ども(1歳)。
手取り月収/10〜30万円 預金総額/約500万円

【ゆとり以上バリキャリ未満の女たち】第4弾「インスタ映えで幸せになれますか?」
Vol.1 インフルエンサーは職場で嫌われる
Vol.2 幸せな結婚するなら「一番普通の男」がいい理由
Vol.3 半年ごとのプロポーズと失恋
Vol.4 「インスタ映え」だけじゃ幸せになれない、でも

Vol.4 「インスタ映え」だけじゃ幸せになれない、でも

ママインフルエンサーになる


「出産半年くらい経ってから、仕事関係の方には少しずつママになったことを話すようになりました。そうしたら、これまではアラサーOL対象の商品の仕事が、ママ向け商品のモニターやイベント集客も頼まれるようになったのです。そうか、これからはそっちの方向もアリなんだと、知りました。

でも、私のママ歴はまだたったの半年。ママのインフルエンサーはすでにたくさんいるし、これから少しずつ、そっちの領域に入っていこうと思います。ママ専門のキャスティングをしている人もすでにいて、私が急にそっちにズカズカ入っていったら、よく思われないでしょう。だから、少しずつ、様子を見ながら」

最近、ベビー服のネタでインスタをアップするようになったら、これまで接することのなかった若いママたちから「いいね!」がつくようになった。

まだ会ったことはないけれど、こういうママたちが、これから瑠璃の仕事仲間になるのかなと、思い始めている。少し前は表現の場がブログだったけれど、今はインスタがメインだ。その中で瑠璃は、派手すぎず地味すぎず、写真の撮り方も上手すぎず下手すぎず、ほどよい加減を目指している。ブログ時代からずっと守っているのは、修正や加工はやりすぎないこと。そして自分の顔は隠さずに出すこと。

瑠璃がフォローしたり、イベントに誘ったりするのも、やはりそういうタイプのインスタグラマーたち。いくらおしゃれでも、文章が雑だったり、素性がわからないような人は、避けるようにしている。実際に会うことは少なくても、信頼できるかどうかの嗅覚はかなり鋭くなった。それでも、会ってみて写真と実物との違いに驚くことはよくあるが…。

 

SNSの中だけに、幸せなんてありえない


二十歳のときに書いた日記の1ページめの言葉。

「いつかファッションビジネスで独立する」

近いところまでは来ていると思うけれど、思い描いていたのとは、ちょっと違う。『LAPIS-LAZULI(ラピスラジュリ)』は、ときどきペンネームとして使うことはあるが、今のところ会社にする予定はない。フリーランスという仕事の形が、今の自分に合っているからだ。

 

働いている姿

 

それに、「私、頑張るから」と夫のマサキに宣言したからには、会社や仕事を大きくすることよりも、休みなく安定的に続けることが最重要なのだ。

「あれだけ勉強した服飾のことやフランス留学経験が、今に活きているかというと、正直ゼロです。やりたいことを仕事にするって、言うほど簡単なことではありません。でも、世の中の流れを見て、求められていることを察して動けば、仕事は生まれてくる。それが、自分の好きなことで楽しいかどうかが、大事なんだと思います。

いつか子どもが大きくなって、またフランス語の勉強を始められたら。そしていつか、それが仕事にも生かせたら。今はまったく余裕はないですし、ずっと先でいいんです。

今は私…、ふたりめの子どもが欲しいんです。以前からそう思ってはいましたが、仕事と育児との両立の仕方がわかってきて、体力も回復して、そろそろ大丈夫なんじゃないかと思えてきて。テレワークで仕事をするにも、子どもふたりで遊んでくれたたら、続けやすい気もするし。夫は、もうちょっと時間を置いてからでもって言っていましたが…。

そんな彼には、こう説得しました。『数年後に欲しいと思っても、いざ妊娠できるかどうかわからない。妊活でたくさんお金を使うことになっても、いいの? って。だから、今なの!』って。結局、今回も夫が折れた形です」

最初の子どもが生まれてから、夫の寝室と瑠璃(と子ども)の寝室は分けているが、排卵期を見計らって、瑠璃が夫の寝室にもぐり込む。大学ノートの日記には、自分の基礎体温とともに、そうした行動記録もつけておく。

「リードするのは、いつも私のほう。でもいいんです。合コンによく行っていたときも思っていました。女性が受け身のほうがうまくいくっていうのは、メディアがつくった幻想じゃないかって。男性だって、何か言ってくれる女性を、行動してくれる女性を、待っているはず。今どきの草食系男子ならば、なおさらです」

思えば、瑠璃の20代は仕事も恋愛も思い通りにならないこと続きだった。そんなプチうつ生活を終わらせたのは、崖っぷちに立った自分の行動だった。インスタ映えとか、SNSの中だけに、幸せなんてありえない。待っているだけの女に、リア充なんてやってこない。

今日も瑠璃は大学ノートに、そんな思いをつづった。毎月の習慣になっている妊娠検査薬でのチェック結果も、記録しておくことを忘れない。

 

子どもがもうすぐ1歳になる今月、妊娠検査薬は陽性反応を示した。

瑠璃は小さくガッツポーズをした。

 

【ゆとり以上バリキャリ未満の女たち】第4弾「インスタ映えで幸せになれますか?」
Vol.1 インフルエンサーは職場で嫌われる
Vol.2 幸せな結婚するなら「一番普通の男」がいい理由
Vol.3 半年ごとのプロポーズと失恋
Vol.4 「インスタ映え」だけじゃ幸せになれない、でも
文/南ゆかり
「CanCam」や「AneCan」、「Oggi」「cafeglobe」など、数々の女性誌やライフスタイル媒体、単行本などを手がけるエディター&ライター。20数年にわたり年間100人以上の女性と実際に会い、きめ細やかな取材を重ねてきた彼女が今注目しているのが、「ゆとり世代以上、ぎりぎりミレニアル世代の女性たち」。そんな彼女たちの生き方・価値観にフォーカスしたルポルタージュ。

 

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